英国の名門ロータス社はエンジンよりもシャシーで名を馳せました。元はというとレーシングカーメーカーであり、コストも莫大なエンジン開発よりもシャシーや空力といった車体分野へより多くの力を注いだブランドだったから、ある意味、合理的な判断だったのでしょう。
そのことは現在のロータスモデルを見ても明らかです。最新のエミーラにはトヨタ製もしくはメルセデスAMG製のパワートレーンが搭載されていますし、過去にはコベントリー・クライマックスやルノー、GM(いすゞ)、ローバーのエンジンを積んだこともありました。余談ですが、中国資本となった現代のロータスがそうそうにBEVブランドへの転身を宣言した背景には、歴史的にみて“性能以外にエンジンへのこだわりがない”ことがあったのかもしれません(もちろんジーリー傘下になったことが最大の要因ではありますが)。もっともロータスに自社開発のエンジンがなかった訳ではありません。900シリーズと呼ばれる4気筒および8気筒エンジンを70年代から90年代にかけて生産していました。
エンジン供給という点でレースおよび市販車の両分野においてロータスとの深い関係を思い出させるのが(コベントリー・クライマックスと並んで)フォードでしょう。フォードとの付き合いが始まったことで、ロータスの社運も一気に上がっていったのですから。
レーシングカーの世界で一斉を風靡したロータスの創業者コーリン・チャプマンは、高価で旧式となりつつあったコベントリー・クライマックス社製エンジンの後継機を探していました。フォード製ケントエンジンに目をつけたチャプマンは、コスワースと組んでレーシングエンジンを開発し自社製レーシングカーへ搭載、さらには自社設計のツインカムヘッドを組み合わせてエランに積むなど関係を深めていきます。
フォード側にもレースやスポーツカー界において勇躍するロータスのブランドイメージをなんとか活用したいという思いがありました。当時のフォードには大衆モデル分野でミニなどに圧倒されていて”時代遅れ”というイメージがどうやらあったようです。
そこでフォードはロータスにツーリングカーのホモロゲーションモデルの製作を依頼します。具体的には超実用車として開発したフォード・コンサル・コルティナにエランの同じロータスヘッドの1.6リットルエンジンを積み込み、2ドアボディの車体やシャシーもロータスがチューニングしてレース用ベースモデルとして開発するというものでした。生産もロータスが請負ったことで、製造キャパシティこそ大幅に超過したものの経営はずっと安定したものになり、チャプマンにとっても大いにメリットのある話だったのです。
こうして1963年に誕生したモデルが、フォード・コンサル・コルティナ(developed by)ロータス、略してロータス・コルティナでした。のちに第二世代が登場したので、現代ではこの初代をマーク1と呼んでいます(古いクルマでマーク1と言う場合は大抵、のちに後継モデルが出たゆえの遡った命名です)。
初期のロータス・コルティナこそ、ボディ軽量化や独自のリアサスなどロータスのアイデアが存分に詰め込まれ、そのぶんトラブルも多かったようですが、ツーリングカーレースを席巻し、フォードにとってもロータスにとってもメリットのあるコラボとなります。その後、市販モデルは徐々にスタンダードの最上級グレードGTと近しい仕様へと変遷しますが、エンジンだけはロータス製ツインカムヘッドの1.6リッターを貫きました。
67年、コルティナのスタイリングが第二世代へとチェンジされます。マーク2の誕生です。変化といってもそれは主にスキンチェンジで、メカニズム的にはマーク1を踏襲していました。当然ながらマーク2においてもトップグレードはロータスでしたが、ロータス色は次第に薄くなり、仕様的にはエンジン以外、コルティナGTと近しいものに。最終的には車名さえもコルティナ・ツインカムとなりました。マーク2のデザインは、ミニのマイナーチェンジ版で有名なロイ・ヘインズ。マスクデザインに共通性が見受けられるのはそのためでしょう。
結局、コルティナ・ロータスは63年から70年まで、二世代にわたって生産されました。合計の生産台数は7300台程度だと言われています。
西川淳の、この個体ここに注目! |
サンデーレースを楽しむには非常に好ましい仕様へとモディファイ済みの67年式コルティナGT改(Mk2 ロータス仕様)です。
平成25年にニュージーランドから輸入された個体で、その時点で既にサーキット走行可能な状態へと改造されていたようです。日本では現在のオーナーで3人目。前のオーナーがほとんど乗らずに放置していた車両を現オーナーが有名整備ショップ(トータス・レーシングサービス)の紹介で平成29年に譲り受け、以来、納得のいく状態にまで仕上げてきた個体です。
競技用燃料タンクを備えるなど、かなりモディファイの進んだ個体でしたが、現オーナーはさらに多くのパートに手を加えています。まず、日本で車検が通るように溶接されていたロールゲージなどを再度組みつけ直したほか、各種配線の引き直し、ステアリングのラック&ピニオン化、OHVサーキット仕様エンジンをロータスツインカムに換装、ピストンやコンロッドの新規製作、フロントディスクブレーキをヴェンティレーテッド化、ウイルウッドのキャリパー、14インチのレボリューションアロイホイール、マウントニー小径ステアリングホイール、アクセルペダルリンケージの最適化、リア板バネ分解調整、ルーフライナー張り替え、などなど、好事家であれば納得の“グレードアップ”の数々です。
オーナー独自の工夫も散見されます。フロントガラスにヒビが入り、英国Triplexに熱線・ぼかし・ロゴ入りガラスを特注。センターコンソールはフェアレディZ(S30)用をそのまま使用。助手席のシートはエスコート用で、ペダルやリアナンバーベースなどはミニ用、ワイパーはハコスカ用を流用しています。
ここまで走りにこだわって仕上げられた個体ゆえ、どれだけハードに使われていたのか心配になりますが、現オーナー、実はレースやサーキットイベントなどには興味がなく、もっぱら通勤や買い物など日常使いの実用車として楽しんでこられました。逆にいうと、雨の日でも風の日でもなんなら台風でも使えるアシとして仕上げられた個体ということで、信頼性という意味ではかなり高い状態に仕上がっていると思われます。燃費も悪くなく、リッター9km近く走るとのこと。
現在、気になる点はデフ鳴りが始まっていること(OHした方が無難)、ラック&ピニオン化した際にピロボールを入れたため大きめの音が出ること、そして三角窓のあたりで水漏れが少し見受けられること、くらいのようです。
オーナー曰く、「ゆっくり走らせてくれない。カーブをこなすごとに速度が上がっていく。自分が潰す前に大事にしてくれる人に譲りたい」とのこと。走りを楽しむことはしばらく卒業して、家族用の実用車に乗り換えるため手放すことを決めたそうです。
これぞハコのスポーツカーの典型で、即実戦可能なコルティナGT・ロータス仕様。クラシックカーレースに出るもよし、このまま走りを楽しむ実用的な趣味車として買うもよし。全体的に多少のサビや塗装割れ、モール傷みなど見受けられますが、それも含めて非常に雰囲気のある個体です。
年式 | 1967年 |
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初年度 | 2013年8月 |
排気量 | 1,557cc |
走行距離 | |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 右 |
カラー | 白 |
シャーシーNo | BA96GY62307 |
エンジンNo | |
車検 | 2023年8月 |
出品地域 | 静岡県 |
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