1994年、当時人気の高かったパーソナルクーペ市場に三菱が満を持して投入したのが「FTO」です。トップスポーツモデルのGTOの弟分として、国内では数少なかった2リッターV型6気筒DOHCを搭載し、国内初のマニュアルモード付ATを採用するなど意欲的な作品でした(1994~1995年カー・オブ・ザ・イヤーも受賞)。現在40~50歳のクルマ好きにとって、三菱のFTOといえば、このクルマをイメージすると思いますが、実はその源流といえるモデルが存在します。それが、1971年にデビューした「ギャランFTO」でした。
ギャランとは1969年から2015年(海外は2017年)まで長く三菱の主力セダンとして活躍したモデルで、可変バルブ機構を持つシリウスDASH3×2エンジン&量産車初の直噴エンジンであるGDIなど時代に先駆けた新機構の採用やWRC(世界ラリー選手権)における日本人初優勝(篠塚健次郎氏)などの話題を覚えている方も多いのではないでしょうか?
ギャランFTOは初代のギャラン(当時はコルトギャラン)をベースとしたパーソナルクーペで、三菱自動車初のピラード・クーペでもありました。また、ファストバックとノッチバックを融合させたセミノッチバックという新鮮かつ個性に溢れたスタイリングもさることながら、1970年代としては画期的な部品共用化=コストダウンが積極的に推し進められていたのが特徴です。部品共用化はエンジンやシャシーは言うに及ばず、ボンネット(コルトギャラン)、ドア(ギャランGTO、コルトギャランHT)などボディパネルまでに及んでいました。
コストダウンの著しかったギャランFTOですが、恩恵もありました。共用プラットホームは、ホイールベースのみを120mm縮めたので、必然的にワイドトレッド&ショートホイールベースというスポーツカーとしては理想のパッケージを得ることとなりました。高性能を前面に押し出した本格スポーツカーである兄貴分のギャランGTOとは異なる、キビキビとした軽快なハンドリングがFTOの魅力であるといえます。
エンジンは全車1.4リットルの直列4気筒OHV(ネプチューン)でスタートしましたが、73年のマイナーチェンジで1.4リットルと1.6リットルの直列4気筒SOHC(サターン)の2本立てとなりました。シリーズのホットバージョンであるGSRは1.6リッターのツインキャブ仕様(110㎰)と5速MT(標準は4速MT)が組み合わされ、高いパフォーマンスを発揮。スタイリングも当時のスポーツモデルの象徴である前後オーバーフェンダー(1974年まで)を装着。シリーズをけん引するモデルとして好評を博しました。
低価格でスポーティなFTOは発売当初から販売好調で、年間台数が2万台を超えるヒット作となりましたが、第1次オイルショックの影響で販売が伸び悩み、ランサーセレステにバトンを繋いで1975年に幕を閉じました。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
ギャランFTOはコレクタブルカーとしては兄貴分のギャランGTOの陰に隠れてしまい、マーケットでかなりレアな存在となっています。仮に見つかってもコンデションに不安を抱えるクルマがほとんどですが、それを覆す上物のギャランFTOが登録されました。
個体はほとんど市場に現存しない前期型のGⅡ(中間グレード)です。ボディはホワイトボディにしてのフルレストア済みで、作業と同時に元色のロッキーホワイトからGⅡには設定のなかったオリンポスオレンジに全塗装されています。ほぼフルオリジナルですが、アルミホイールは旧車の定番といえるハヤシストリートをセット。足下も決まっています!
現オーナー曰く、「ボディはかなり程度が酷かったので、本来なら廃棄されてもおかしくない状態だったのですが、内装と機関の程度が良かったので、レストアが行えました。純正部品はほぼ製造廃止であったため、損傷が激しいパネル類は職人が1枚1枚たたき出して仕上げています。市場価値としてはホットバージョンのGSRより劣るので、このクルマが生き残ったのはある意味、愛情というしかないでしょうね」とのこと。
上記のコメントにもあるようにインテリアは45年以上が経過しているとは思えないくらい良好。どのような場所で保管されていたのか、今は知る由もありませんが、ダッシュボードを含むプラスチックパーツに割れや傷みも少なく、当時のスポーツカーの代名詞といえる多連メーターも美しさをキープしています。慎重に各スイッチを操作してみましたが、機能は生きていました。また、この個体で注目すべきは、助手席前にセットされた貴重な吊り下げ式クーラー。動作も確認できましたので、旧車が苦手な夏場も快適に乗り切れるのは高ポイントだといえるでしょう。
走行距離は実走で41,705kmで、各部のオーバーホールなどは施されていませんが、エンジンを含めて機関も整備が行き届いています。マウントに少しヘタリを感じますが、キーシリンダーを捻れば、心臓部は即目を覚まし、アイドリングも安定していました。4速のミッションも軽い操作で、ゲートに吸い込まれるなど、安心感も抜群です。気になったのはバンパーやドアハンドルのメッキ類。特に助手席側のドアハンドルは剥がれ、クラック、浮きも多数ありました。機能的には問題はありませんが、ボディが美しく仕上がっているだけに可能ならばリペアしたいところです。
数少ないクルマだけに、今後若干心配は残りますが、現状大きな問題がなく、毎日乗れるコンデションですので、国産クラシックカーの入門としては最適な個体だといえます。ただし、決して速さを競ってはいけません。ノスタルジックな気分に浸り、粋に乗りこなすのが、現代を駆け抜けるギャランFTOには似合っています。
年式 | 1972年 |
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初年度 | 1972年7月 |
排気量 | 1,378cc |
走行距離 | 41,705km |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 右 |
カラー | オリンポスオレンジ |
シャーシーNo | A61-0012273 |
エンジンNo | |
車検 | 車検2年付き |
出品地域 | 大阪府 |
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