フェラーリの買収に失敗したフォードは、自らマシンを製作してル・マン24時間レースに挑むことを決意した。フェラーリに勝つことで、その名を再び世界に轟かせたいヘンリーフォード二世。フォードの秘密兵器がフォードGTだった。
とまぁ、映画の宣伝(フォード対フェラーリ)はこれくらいにしておきましょう。とにかく、今でも多少はそうなのですが、1960年代の頃は今よりもはるかに、ル・マン24時間レースは自動車メーカーにとってブランドを世界に広めるための最も大切な場所のひとつでした。そして、ヘンリーフォード二世こそは、ル・マンに勝つことで得られるマーケティング効果を最も信じていた人物だったのです。
当時、ル・マンにおいて栄華を極めていたのがフェラーリであり、フォードは手っ取り早く買収を試みますが失敗。するとすかさず英国ローラと組んでフェラーリに打ち勝つべく、GT40というミドシップレーサーを製作。そしてキャロル・シェルビーと組んだ66年から見事に四連覇を果たす……。
とまぁ、簡単に記せばそういう歴史になりますが、話はもっと複雑で、そのうちの一年(初勝利の66年)が映画になるほどの物語だったといえば、その面白さを想像してもらえることでしょう。
それはさておき、とにかくフォードGT、後のフォードGT40、は、世紀を代表する名レーシングカーとして今なお人気のモデルです。ロードカーとして生産されたマークⅢを除けば基本レーシングカーのみであり、総生産台数は110台前後と思われます。それゆえ、本物を手に入れることは非常に難しく、レースヒストリーのない個体でもその価値は軽く一億円を超えてしまいます。メーカー自身がそのデザインをイメージした後継車を製作するほど、その名は世界に知れ渡っているのです。
本物を買うことは不可能に近い。けれども、あのカタチは大好き。そういう方々のために、あえて紹介したいのがGT40レプリカの存在です。
前述したとおり、本物のGT40は主にレーシングカーとして製造されました。それゆえそのレース活動やメンテナンスに関わった人物の数も多く、また施設や金型、ツールなども、そもそものプロジェクトがスタートした英国に多く残されていました。レースチーム運営が途中でキャロル・シェルビーに切り替えられたこともあって、それ以前のチーム関係者が、言わばフォードGT40関係者の残党として、次第にGT40の名声を活用しはじめたのです。
そうして生まれたのが、数多くのレプリカ、コンティニュエーション、キットカーと呼ばれるクルマたちです。代表的なものとしては、スーパフォーマンス、サフィア、ERA、KVA、CAV、サザンGT、ホルマンムーディなどを挙げることができますが、なかでも一時期日本に正規輸入元が存在したこともあって日本で最も有名となったフォードGT40レプリカが、GTD社によるGTD40ル・マンでした。
西川淳の、この個体ここに注目! |
元々がレーシングカーであるということは、どの状態が本物であるかという検証が非常に難しいことを表しています。特にフォードGTとして64年にプロトタイプデビューを果たしたフォードGT40は、レースに勝つためにその都度モディファイを受けており、また、レースレギュレーションに翻弄されたこともあってか、シャシー番号によってそのコンフィギュレーションに違いが散見されています。
それゆえ、本物に近い!と言っても何を基準にしていいのか曖昧なのですが、それでもその醸し出す雰囲気がいかにも本物らしいかどうか、という判断を下すことは可能です。出会った中古車の佇まいを見て、モノの良し悪しが何となく分かることとそれは似ていると思うのです。
その点、このGTD40には粗暴な処理が一切見受けられず、凛とした佇まいで、なかなかの存在感を放っていると思いました。現オーナー曰く、当時の正規輸入元がデモカーとして保有していた個体らしく、某有名自動車番組にも登場したことがあるそうです(確認済み)。
モケットを使ったインテリアのコンディションが素晴らしく、オドメーターを見て得心しました。走行距離はわずかに820マイル。現オーナーによれば、デモカー&ショーカーとして活用された後、登録されることなく倉庫に眠っていたそうです。現オーナーによって軽整備され、登録されたので、初年度登録は平成29年となっています。
細かく見れば、キズやシールド接着剤のはがれなど、気になる点もありますが、全体的には良いコンディションを保っていると思います。何より、乗ってみたい、ドライブしたいと思わせるだけの雰囲気が、このデザインにはある。たとえレプリカであっても、多くの人が憧れる存在たるゆえんでしょう。
GT40を知り尽くした現オーナーによってエンジンまわりは整備され、すでに登録済みでもあります。近年、本物の相場が青天井になっているため、それに連動してレプリカの相場も上がってきており、コピーといえど手軽に楽しめるクルマではなくなってきました。
往年の名レーサーを手軽に楽しむラストチャンスかも知れません。某TV番組出演車両というあたりも、日本で楽しむためのサブストーリーとしては面白いと思います。
年式 | 1989年 |
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初年度 | 2017年5月 |
排気量 | 3,185cc |
走行距離 | 850km |
ミッション | 5MT |
ハンドル | 左 |
カラー | ブルー |
シャーシーNo | ZFFWA19B000078587 |
エンジンNo | |
車検 | 2018年2月 |
出品地域 | 群馬県 |
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