名俳優が愛した アメリカングラフティカー

第2次世界大戦後にアメリカ全土で起こった空前の欧州スポーツカーブームに対抗するべく開発され、1955年~1957年まで販売されていたのが初代フォード・サンダーバードです。60代以上のクルマ好きにとっては映画「アメリカン・グラフィティ」の劇中でスーザン・ソマーズが演じていた「女神」の愛車として印象に残っている方もいるのではないでしょうか?

2年先んじて発売されたシボレー・コルベットの拙速な開発によるローンチ失敗を横目で見るや、本格スポーツカーの開発は時期尚早とフォード陣営は判断しました。そこで、伸びやかで端正なローシルエットのスポーティ感漂うフォルムをまとい、最新の193psを誇る292cu:in(約4.8ℓ)V8OHVエンジンを搭載するなど、スタイリングとパフォーマンスでスポーツカーユーザーの注目を集めつつ、メカニカルコンポーネンツはオーソドックスな量産フォード・セダンのものを使用するという“安全策”に打って出たのです。高い信頼性を確保しながら、大量生産能力も担保するための戦略でもありました。

また、パワステ、パワーブレーキ、パワーウィンドウ、パワーシートなどオプションを含めて充実した快適装備が選べたのもサンダーバードの魅力でした。中でも面白いのは、1955年式(1957年式も)はオープンカーなのにFRP製のハードトップが標準設定であり、ソフトトップがオプションであったこと。自宅のスペースに余裕のあるアメリカならでは、の考え方だったのかもしれません。3速MTが標準で、電磁式オーバードライブ付き4速MTとフォードマチック(AT)がオプション設定されていました。

スポーツカーではなく、快適なパーソナル・スポーティカーを目指したフォードの路線は見事に成功し、初年度から1万6000台強の売り上げを記録。対するライバル・コルベットの販売台数が約700台でしたから、販売台数では大きく溝を空けることに成功したのです。

翌1956年には、292cu:inのエンジンに加えて、225psの312cu:in(約5.2ℓ)のエンジンを、1957年には312cu:inにスーパーチャージャーを組み込んだ300psの高性能バージョンを追加するなど、年々、市場の要求に応えるべくハイパフォーマンス化が推し進められました。パーソナルカーとしての基本のキャラクターこそ変わりませんでしたが、市場の要求を無視することはできなかったのでしょう。

販売は好調に推移したとはいえ、2シーターはファミリー層から支持されない、というマーケットリサーチの結果から、1958年に登場した2代目は4シーターコンバーチブルへと姿を変えました。以後、マスタングの登場もあってラグジュアリー路線へと舵を取ることになっていくのですが、初代サンダーバードはそれまで大衆車メーカーとしての印象が強かったフォードにスポーツカーという新たなカテゴリーを確立させた立役者といっていいでしょう。


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取材車両は初代サンダーバード・ファーストモデルです。初年度登録は1990年で、複数所有歴を経て現在のオーナーのところにやってきました。手に入れたときにはすでに内外装ともにフルレストアが施されていましたが、日本の道でも安心して走れるようにと水回りとエアコン関係に手を加えられており、現代の交通事情にも耐えうる’50sとしてブラッシュアップされています。VINプレートを確認したところ、ボディはホワイト、内装色はホワイト×レッドのコンビネーションと判明しましたので、オリジナルに忠実にレストレーションされています。一通り車体各部の状態を確認しましたが、今すぐに手を入れるべきところは見当たりませんでした。

ボディは前から見るとスッキリとしたクリーンな印象ですが、後方に回ると後付けのコンチネンタルキット(タイヤを背負う)装着により、大きく後方にせり出したリヤバンパー、その上にタイヤを挟むように取り付けられた2本出しのマフラーなど、その奇抜なデザインはまさにアニメーションに出てくる空飛ぶ自動車のようです。今見ても斬新な造形は、街中を流すだけで、熱い視線を感じることは間違いありません。また、標準装備品であったFRP製のハードトップは後方の視認性を考えて後方にポートホール(穴)が加えられた1956年式以降のものに交換。オプションであったソフトトップは張り替えられており、こちらもコンディションも良好です。

外光透過式の大型スピードメーターに、細身のステアリング、ゆったりとしたベンチシート、オリジナルを損なわずに美しく仕上げられた赤と白のコンビネーションのインテリアに体をゆだねると気分はまさにアメリカン・グラフィティの世界。誰もがすぐにオープンにして走り出したくなる衝動に駆られるはずです。映画を見て、当時のアメリカンライフスタイルに憧れた世代とっては一目見るだけで心躍る一台だと思います。

このサンダーバードのハイライトは俳優の故・夏木陽介氏の元愛車であることでしょう。記録をたどると1998年から2004年まで7年間、夏木氏の所有であったことが判明しています。良好なコンディションのファーストモデルであるというのみならず、コレクタブルカー好きとして名を馳せた夏木氏の愛でた個体であったというヒストリーもまた、ひとつの勲章と言っていいでしょう。

車両スペック

年式1955
初年度19907
排気量4,785cc
走行距離7,538km
ミッション3MT
ハンドル
カラー
シャーシーNoP5FH195398
エンジンNo
車検20199
出品地域大阪府
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
  • 車両の状態を専門的にチェックしているわけではありませんので、何らかの不具合や故障が含まれる場合があります。また取材から日にちが経過することによる状態変化もあり得ます。掲載情報はあくまでも参考情報であることをご理解いただき、購入に際してはご自身の車両状態チェックとご判断を優先ください。
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