1969年のデビューから78年までのおよそ10年間に渡り、約53万台が日本で生産され、そのほとんどが海外市場、なかでも北米マーケットへ輸出されたというS30型フェアレディZ(輸出名ダットサンZ)。
70年はじめにアメリカで販売が始まった際にはディーラーに注文が殺到し、納車待ちの列はすぐさま半年以上にもなったという。すぐさま日本での生産が増強されましたが、それでもその8割をせっせとアメリカに輸出していたというから驚くほかありません。今なお“ダッツン・ズィー”の愛称で親しまれており、毎年、Zオーナーを集めたZCONという大イベントが開催されています。
S30Zに搭載されたエンジンは基本的にL型の直6SOHCでした。日本仕様としては2リットル(L20)のZ(4MT)と装備充実のZ-L(5MT)というノーマルグレードに、唯一L型ではない名機S20型の2リットル直6DOHCエンジンを積んだZ432(4バルブ・3キャブ・2カム)という合計3グレードをデビュー当初に設定。70年にはノーマルモデルに3AT仕様が追加されたほか、71年にはエアロダイナノーズ(グランドノーズ、通称Gノーズ)を装着した240ZGをはじめとする240Zシリーズ、そして74年にはホイールベースとルーフを延長し+2シーターとした2by2モデルが投入されるなどしました。ちなみにZ432と240ZGは日本国内専用モデルで、今では国産旧車を代表するコレクターズアイテムとしてその名を世界に馳せています。
一方、アメリカ市場向けとしては2.4L(L24)のダットサン240Z(4MT、のちに3AT追加)に始まって、2.6Lの260Z、2.8Lの280Zへと進化していきます。あまりに納車待ちが多かったため、早く作って早く売ることに専念したのでしょう、グレード構成はかえってシンプルなものに終始したようです。
アフリカのサファリラリーやアメリカのSCCAレースなどモータースポーツでの活躍もあって、フェアレディZは一躍、世界中の若者たちが憧れるスポーツカーとなります。ポルシェなど世界の名スポーツカーに比べてずいぶん安価だったと言われましたが、デビュー当時の日本における価格は大卒初任給のおよそ20倍、Z432に至ってはさらに倍の40倍という価格設定になっていました。
オーナーA氏と西川淳のQ&A! |
西川(以下、西):非常に珍しいオートマチックのプリザベーション(ノーレストア)個体です。まずはこの個体とのなれそめをお聞かせください。
A氏(以下、A):2013年に仕事でロスを訪れた際、ジェイ・アタカさんの経営する有名な日本車パーツショップ(JDM AUTO PARTS)で見つけました。
西:どういう素性のクルマだったのですか?
A:ずっとワンオーナーで大事にされてきたようです。前オーナーが50歳のときに奥様と二人で近所の教会へ通うために買い求めたと聞いています。なんでもマニュアルミッションが欲しいなら納車まで半年待ちだけれど、オレンジのオートマならすぐに引き渡しできるとディーラーに言われたらしく。
西:それにしてもノーレストアで良い雰囲気ですね。そのうえ佇まいもビシッとしていて、旧いクルマにありがちな崩れ感がどこにも見あたらない。
A:湿気のないカリフォルニアの空のもと、週に一回は必ず動いていたようです。数キロ先の教会までの往復が主で。オートマということもあって、穏やかに乗られてきた感じがありますね。まるでタイムマシンでやってきたかのような奇跡のコンディションを保っているのは、こうした良い条件がたまたま重なったからだと思います。
西:オリジナルペイントの質感なんて、最高じゃないですか!
A:当時の日産による組み立ての精度や、塗装の質、エッジやラインの付け方、などなど、どこを見ても「ああこうだったんだ」という発見がありますね。ドアなどの立て付けなど、いい意味でそれほどきっちりと仕上げられていない部分もあって。ペイントもエッジを効かせているというよりは、どことなく柔らかで丸い印象です。
西:ノーレストアゆえ、ボディのあちこちにタッチアップの跡や、スチールパーツには若干の錆もありました。
A:そこはもうあえて残してあります。ステアリングホイールの色あせとかマフラーの錆とか、それもまた味わいだと思います。嫌なら交換すればいいだけの話ですし。もちろん、ボディのなかや裏など大事なところに大きなダメージは全くありません。
西:先ほど試乗もさせていただきましたが、ボディもまだまだしっかりとしているし、乗り心地もよかった。現役の走りというやつですね。
A:そうなんです、剛性なんてありゃしないと言われるS30ですが、この240Zに乗るとそうでもなかったんだな、って思い直します。あとボディ剛性とはちょっと違う話なんですが、スイッチなどももともとはちゃんと節度があったんです。
西:何より2400ccエンジンとオートマチックの相性が抜群に良かった!S30のオートマには初めて乗りましたけど、こんなに良いものだとは知りませんでした。4速MTよりある意味、良かったかも。
A:2400ccのアドバンテージを十分に活かし、まったくストレスなく運転できますよね。デフはR180型のギア比3.545でキックダウンスイッチもちゃんと機能します。カリフォルニアの青空の下でオレンジ色の美しいスポーツカーを、毎週末、夫婦でのんびりと走らせていたんだなぁ、なんて想像するだけでとても穏やかな気持ちになります。
西:ドキュメントも沢山残っています。
A:車体や装備の説明書はもちろん、整備記録や領収書の類からディーラーに展示されていた際のプライスシートまで、とにかくこの個体に関するものなら何でも残しておいてくれたようです。
西:歴史を紐解くだけでも楽しめそうだ。購入後、Aさんが手を入れた箇所はあるんですか?
A:はい、エアコンコンプレッサーのオーバーホールと、ヒーターホースを交換しました。逆に言うとたったそれだけでして(笑)。シーズンごとにガスを補充しなければなりませんが、エアコンはちゃんと効きますよ。
西:この個体は72年式ということで、240Zとしてはマイナーチェンジ後のクルマになりますね?初期型との違いを教えてください。
A:1971年10月に、いわゆるマイナーチェンジが実施されました。日本国内で240/240ZGシリーズがデビューしたことに合わせて行なわれたのです。初期型との違いを挙げてみましょう。
・センターコンソールのデザインが一新された
・マップランプに日除けを追加した
・エアコンのセンター吹き出し口に細かいルーバーを追加した
・シートバックをスリムタイプに変えた
・工具入れをシートバック後方からリアデッキ上部へ移設した
・ハッチゲートのエアアウトレットをCピラーエンブレムへ移動した(エンブレムに穴を開けて対応しています)
・E88型ヘッドに換装し、レギュラーガソリン対応のため圧縮比を9.0から8.8にした
・デフを35ミリ後ろにずらした(後輪のドライブシャフトが一直線になりました。それまでは追突事故時にガソリンタンクと干渉するリスクを避けるためデフを後輪車軸に対し35ミリ前方に置いていたのです)
・新デザインのホイールキャップを採用した
・シートベルト装着の警告スイッチとブザーを装備した
西:いろいろ細かく違っているのですね。勉強になります。読者の皆さんには、Aさんが今回一緒に出品してくださった1970年式初期型240Zのリポートもあわせて是非ご覧ください。
年式 | 1972年 |
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初年度 | 2013年10月 |
排気量 | 2,393cc |
走行距離 | |
ミッション | 3AT |
ハンドル | 左 |
カラー | オレンジ |
シャーシーNo | HLS30-60213 |
エンジンNo | L24-072419 |
車検 | なし |
出品地域 | 奈良県 |
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