誰もが振り返る際立つスタイリングと乗る人の感性を刺激する走り。アルファロメオの神髄ともいえるこの二つの個性を色濃く体現したミレニアム世代初のフラッグシップクーペがブレラです。2002年、ジュネーブ・モーターショーでコンセプトモデルとして発表。ジョルジェット・ジウジアーロによってデザインされたロングノーズ+リアショートオーバーハングというノッチバックスタイルは、同イベントのコンセプト・オブ・ザ・イヤー最優秀賞を獲得するなど、絶賛されました。その鮮烈のデビューから3年の月日を経て、ブレラはオリジナルのイメージを壊すことなく生産型へと移行されます。
睨みを利かせた三眼のフロントフェイス、ボリューム感のあるグラマラスなヒップの造形などはいい意味でアクが強く、今見ても新鮮さを失っていません。この色褪せないデザイン力がブレラの一番の魅力と言えます。また、コンセプトで採用された特徴的な盾グリルは、ミレニアム初期のアルファのデザインアイデンティティとなっており、その後に登場した156(MC)GT、147(MC)、159といった量産モデルにも採用されました。
デザイン以外に大きく刷新されたのが、プラットフォームとエンジンです。ブレラが開発されていたのは、親会社であるフィアットとGM(ゼネラルモータース)が業務提携により、部品の共用化が進められていた時期でした。そのため、プラットフォームはオペル・ベクトラと共通、エンジンのブロックもオペル製となっています。これにより、熱狂的なアルフィスタ(ファン)からは「アルファらしくない」「濃さがなくなった」など揶揄されましたが、ドイツの血が注入されたことで得た、高いスタビリティと奥深いハンドリングは、旧来のアルファロメオ車が持っていた走行面での危うさを払拭し、クルマのポテンシャルは別のステージに上がったと思えるくらいに高みの領域に到達しています。
エンジンもシリンダーヘッドはアルファロメオが独自に開発した直噴のツインカム仕様で、軽快かつ爽快なフィールはアルファの味を残しており、スポーツエンジンとしての出来も秀逸です。
先代以前の古典的で癖のある走りや純血や官能性など気持ちに訴えかける感覚的な部分は若干失われた気がしますが、走る・曲がる・止まるといった基本性能の偏差値が引き上げられたブレラはアルファロメオのスポーツカーとして新たな時代を切り開いたモデルだと言えます。また、VDCやASR、MSRやヒルホールドシステムといった安全装備も充実し、アルファ乗りなら避けて通れないと言われてきたトラブルも、先代モデルに比べて圧倒的に少なくなったことも、GMとの共同開発による大きなメリットといえるでしょう。
日本に導入されたのは2.2ℓの直4と3.2ℓのV6の2種類で、前者はFF、後者はQ4と呼ばれるAWDとなっています。2006年当初はマニュアルの6速MTのみでしたが、2007年に2.2ℓにはセミATのセレスピード、3.2ℓにはアイシン製の6速ATが追加され、購入層を拡大しています。モデル後期には豪華装備のプレミアムとスポーツグレードのTI(ツーリズモ・インテルナチオナーレ)が加わり、軽量化が施されるなど、魅力を高めています。
ユニークすぎるスタイルのため販売台数が伸び悩み、商業的には失敗に終わりましたが、その存在感あるスタイリングと希少性から、今後コレクタブルカーとして所有欲を満たしてくれる1台となることは間違いないでしょう。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
今回の個体は2008年式の2.2JTSのセレスピード(2ペダル6速MT)です。装備の充実したマイナーチェンジ直前のモデルで価格もこなれ、初期トラブルというウミが出きっているため、マーケットでは非常に狙い目の年式です。加えて、オプションのパックバイキセノン(キセノンヘッドライトとヘッドライトウォッシャー)とパックペッレ フラウ(イタリア家具メーカーのポルトローナフラウ社製レザー仕上げ+フロントパワーシート+フロントシートヒーター)、18インチアルミホイールなど後期型の上級仕様である「プレミアム」に準じた装備となっており、所有する満足度も高い1台です。
ボディカラーは定番のロッソ・コルサではなく、落ち着きの中に気品があるカーボンブラックで、組み合わされる内装は鮮やかなレッド×ベージュ。ドアを開けた瞬間にパッと花が開いたような、華やかな雰囲気の仕立てはイタリアのセンスを感じずにはいられません。ヒップコンシャスな魅惑のプロポーションをさらに引き立てています!
現オーナーは学生時代にブレラの発表を見て、そのスタイリングに一目惚れ。9年前に叔父が新車で購入した個体をメンテナンスガレージも含めて譲り受けたそうです。さらに、どうしてもMTに乗りたくなり、2013年に3.2JTSを増車するなど、ブレラに相当入れ込んできたそうです。主治医は岐阜県各務原市にあるイタフラ専門店の「レッドポイント」。6か月ごとのオイル交換、12か月、24か月点検は欠かさず行い、さらに弱点である電気系統の対策メニューを施すなど徹底したコンディション維持に努めた結果、これまで大きなトラブルは一切ないそうです。現在の走行距離は約6.1万キロとやや走っていますが、このまま同様のメンテナンスを続けていけば、調子よく乗り続けられそうです。
内外装についてもシャッター付きのガレージに保管されていたため、ボディの退色や内装の劣化、ダッシュボード類にに見られる特有のベタつきも見られません。マイナスポイントはドアのエッジ部分に小さな凹みや傷が数か所、フロントバンパーに小さな飛び石傷程度。Cピラーにも1か所線傷がありますが、これはコーティングで消えるもので、一皮むけばボディはひと際際立つでしょう。インテリアは、助手席のドアシルに擦り傷、運転席右側のサイドサポートに擦れがみられる程度で、全体のコンディションは概ね良好です。
ドアを閉めたときの密閉感が高く、オーディオの音響も素晴らしい。座ったときに伝わる安心感はブレラ以前のアルファロメオを知る人が乗ると驚くことでしょう。
「転勤で乗り続けることが難しくなっての苦渋の選択の上での出品です。免許を取得してから大事にしてきましたから、引き継いでいただける方にも長く維持していただき、ブレラをこれからも多くの人に見ていただければ、と思います。実はMTのブレラはパーキングエリアで、突然『売ってほしい』と声を掛けられた年配の方の熱意に負けてお譲りしたのです。売却できたことよりも『何としてでも手に入れたい』と思わせるほど、魅力溢れたクルマであると再確認できたことが何より嬉しかったですね」とのこと。
コンセプトカーのイメージを色濃く反映したデザインファーストなクルマゆえに個性が強く、多くの人に受け入れられなかったブレラの相場は、年数の経過とともに緩やかに下落しています。ただ、一部の熱狂的なファンが存在するのは間違いなく、市場から数が少なくなるとともに、相場が上がる可能性を秘めています。人生に潤いを忘れない、クルマを知り抜いた真の大人にこそ乗っていただきたいブレラ。専門店でしっかりとメンテナンスと愛情が注がれてきた今回の個体は、永遠のパートナーとして豊かなカーライフを楽しみたいという方にお勧めです。
年式 | 2008年 |
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初年度 | 2008年9月 |
排気量 | 2,198cc |
走行距離 | 61,000km |
ミッション | 6MT |
ハンドル | 右 |
カラー | カーボンブラック |
シャーシーNo | ZAR93900005020890 |
エンジンNo | |
車検 | 2021年10月 |
出品地域 | 岐阜県 |
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