第三世代のSLシリーズをマニアはR107と型式名で呼びます。1971年から89年まで実に18年ものあいだ生産されたロングセラーカーであり、メルセデスベンツの工場で造られたモデルのなかでは最長不倒記録です。累計生産台数はなんと23.7万台!あの時代、唯一のオープントップ可能なメルセデスベンツでもありました。
日本市場では特に86年以降の成熟した最終シリーズがバブル経済で浮き足立った時代と重なったことも手伝って、たとえば流行り出したばかりのAMGパーツを装備したSLあたりがステータスシンボルになりました。バブル時代を象徴する高級車でもあったのです。
ミディアムクラスW114用をショートホイールベース化したシャシーを基本としながら、Sクラス用として開発されたひとクラス上の6気筒もしくは8気筒エンジンを搭載するという手法は、当時のスポーツカー造りのお手本ともいえるもの。コンパクトかつ精悍なルックスの2ドア2シーターオープンスポーツカーとして、その世界的な人気はポルシェ911と二分していたと言えるでしょう。
R107シリーズには大きくわけて7つのモデルがありました。280、300、350、420、450、500、560で、数字はおよその排気量を表しています。
86年以降の最終シリーズはこのうち、280と420、500、560の4グレードであり、さらに日本に正規輸入されていたのは280、420、560の3グレードでした。560は日本とアメリカ、オーストラリアでのみ販売された輸出仕様で、排ガス対策のため500の代わりに設定されたグレードでもあります。そのため近年、見た目が欧州仕様に近い左ハンドル日本仕様の560SLが大変な人気となり、程度の良い中古車はあらかた欧州バイヤーに買い漁られてしまったようです。
そして、SLマニアは当時からある重大な事実に気づいていました。実は排気量の大きい560よりも500の方がパワーもトルクもあって、最高速度や加速性能も上だという事実に(それ故、日本やアメリカの排ガス規制をクリアしなかったわけですね)。
よって当時、ツウにとっては正規モノの560SLではなく、並行モノの500SLを買うことがR107のナンバー1ステータス(つまりはエラい!)だったのです。しかもアメリカや日本で大人気を博した560SLが最後の三年間で実に3万台以上も生産していたのに対して、合理的なバイヤーの多いヨーロッパ市場が主戦場であった500SLは同じ期間に560SLの10分の1ほども生産されていません。実は生産台数の少ないR107でもあったのです。このことは、今後R107の評価がさらに高まったときに、重要な事実としてその価値に織込まれることになるでしょう。
歴史的な名車である300SLロードスターを始祖にもつSLクラス。第二世代W113、通称パゴダはすでに定番のクラシックモデルとなり、価格も大いに高騰してしまいました。それゆえ、その後継であるR107とさらにはそのまた次に登場する第四世代のR129にカーマニアの熱い視線が注がれています。
なかでも大排気量エンジンを搭載する一部のトップグレードに人気が集中する傾向があり、今後もますます注目されることでしょう。
西川淳の、この個体ここに注目! |
この時代のメルセデスベンツといえば、ブルブラ=ブルーブラックのボディカラーというのが定番でした。内装もブルーでまとめられたこのキレイな個体は88年式の欧州仕様500SLです。走行距離も5.3万キロと、この時代のSLとしては大変少ない方でしょう。
解説でも触れましたが、500SLは560SLよりもパフォーマンスで上回る存在でした。具体的には最高出力240ps&最大トルク41.0kg-mで、560SLの235ps&39.6kg-mをわずかながら上回っていたのです。最高速度も+5kmの225km/hでした。つまりR107シリーズにおいて最終仕様(86年以降)の500SLこそが最強グレードだったというわけです。
最初のオーナーが長い間大事にされてきた本個体を現オーナーが引き継いだのは半年前くらいのこと。クラシックカーライフをこよなく愛する現オーナーはこの500SLを普段乗りに使うつもりで購入されましたが、他にも実用車があって、結局ほとんど乗らず仕舞い。せっかくの上物なのでどなたか大切に引き継いで乗ってくれる方にお譲りしたい、ということで掲載の運びとなりました。
内外装のコンディションは上々です。ところどころ細かなキズや経年劣化も見受けられますが、同年代の使われてきたSLと比べれば最上の部類に入ると言っていいでしょう。正規モノにはなかった+2の4シーターという点も魅力。
ハードルーフが備わっています。残念ながらひとりでは脱着できません。このまま完璧なクーペスタイルを楽しむのもまた一興というものではありませんか。もちろんオトナ二人でなら脱着可能ですが。
並行輸入とはいえ、前オーナーはこの個体を正規ディーラー(シュテルン品川)で購入し、その後のメンテナンスもそこでされてきました。整備記録もシュテルン品川のものが残っています。そしてしかも品川33ナンバー。なんとかこのナンバーも引き継いでいただきたい。
実際に数時間ほどドライブしましたが、ニュートラル付近でステアリングにガタがあったこと以外、快適な走りを楽しむことができました。ステアリングのガタや他に現オーナーが気になっている箇所についてはこれから販売までに修理するとのこと。
R107がコレクターズアイテムとなったとき、必ずや評価されるであろう、最強の500SL。しかも人気色の完全なオリジナルコンディション。今回を逃すと次はなかなか出会えそうにありません。
年式 | 1988年 |
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初年度 | 1988年3月 |
排気量 | 4,973cc |
走行距離 | 53,500km |
ミッション | 4AT |
ハンドル | 左 |
カラー | ミッドナイトブルー |
シャーシーNo | WDB107461A080522 |
エンジンNo | |
車検 | 2021年4月 |
出品地域 | 東京都 |
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