日本の日産GT-Rがそうであるように、スポーツカーのアメリカ代表がシボレー・コルベットです。1954年に初代C1型がデビュー。現在は7代目(C7型)ですが、生誕65周年の2019年7月に次期型C8がついにローンチされました。これまで長きに渡って受け継がれてきた伝統のロングノーズ&ショートデッキのFRスタイルを捨てて、ミッドシップのリアルスーパースポーツへ。その変貌ぶりに国内外で大きな話題となりました。
8世代のコルベット史において最も長く生産されたのが3代目のC3型です(生産期間は1968年〜1982年)。2代目のC2型に続き、チーフデザイナーのビル・ミッチェルと日系人のラリー・シノダが手掛けた躍動感あるボディデザインはコークボトルラインと称され、当時のヨーロッパのスポーツカーとは一線を画するそのグラマラスなスタイルで米国のファンを熱狂させました。
ボディは2ドアクーペとコンバーチブルの2種類。後者は1975年で生産を終えています。ラダーフレームは先代のC2型からのキャリーオーバーでしたが、ジオメトリーを変更することで熟成が図られています。デビューした1968年は大排気量&ハイパワーのマッスルカー隆盛の時代で、コルベットもスタンダードは5リッター級V8エンジンでしたが、上級グレードには7リッター400psを超えるモンスターユニットを搭載し、高いパフォーマンスを誇示していました。1970年には歴代コルベット最大排気量となる7.4リッターを搭載するなど、力による栄華を極めましたが、その年に発表された大気浄化法改正(マスキー法)、その後のオイルショックなどにより、エンジンは次第に牙を抜かれ、豪快な走りは年数が経過するとともに影を潜めていきました。スタイリングも初期のアイアン(クローム)バンパーから、衝突安全対策が施されたウレタンバンパーに変更され、時代を追うごとにスタイルも様変わりします。
ただし、販売台数はパフォーマンスの低下の影響を受けることなく伸び続け、そのピークはなんとモデルライフも終盤に差し掛かった1979年のことでした。スタイリングの魅力が色褪せなかったこともさることながら、いかにコルベットそのものがアメリカで愛されていたかが窺い知れるエピソードでしょう。
モデル後半は独自のリア・リーフスプリング機構のFRP化やインジェクション仕様の導入など、次期型のC4型に向けた新たな取り組みも行われながら進化を続けましたが、1982年にその幕を閉じます。
C3型はアメリカのマッスルパワーの隆盛から、オイルショックなどの暗黒時代を乗り切り、どのような形で次世代にバトンを繋ぐかを模索したモデルでもあったのです。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
まず、色鮮やかなモナコオレンジに目を奪われました。抑揚のあるコークボトル・スタイルのデザイン、コンバーチブルならではの解放感あるスタイルによく似合っています。車両は1969年式のビックブロックを搭載するモデルで、この年式のみにオプション設定された純正サイド・エキゾーストも装置され、サイドビューの迫力を際立たせています。
C3コルベットには25周年記念車(インディペースカー仕様)や1982年最後のコレクター・エディションなどの限定車が、コレクターズアイテムとしては人気が高いのですが、コレクタブルカーという目線で価値があるのはC3のオリジナルデザインである1968、1969年式のビックブロックエンジン搭載車ではないでしょうか?
1969年までの排気量は7リッター。仕様違いで4種類(L36、L68、L71、L88)用意されていましたが、今回の取材車両に搭載されているのはスタンダードなL68型。低速トルクと高回転のパワーを引き出すTri-powerと呼ばれるホーリー社独自の特殊な3連キャブレターを装着することで400ps/460ibs・ftを発生する強力なV8エンジンです。
現オーナーのコルベット歴はすでに30年以上で、古いモデルから現行車まで数多くを乗り続けてきた愛好家です。長年、アメリカで事業を行ってきた関係で、現地にも独自ネットワークがあるそうで、このC3もそのルートを通じて話が舞い込み、購入を決めたそうです。
「古いコルベットはこれまでもアメリカから直接仕入れてきました。知人のショップなどからどのような個体であるかの情報を吸い上げますが、最後はすべて自分で見て、自分で話をして決めています」とのこと。ボディの履歴に関して詳しいことは不明ですが、各部を見ればオリジナル塗装の可能性も高いと思われます。年式から考えるとかなり美しい状態をキープしていますが、さすがにラインオフは50年前。フロントリップやドアノブや幌の周辺の傷や色剥げを含み、内外装ともにヘタリや傷みは見受けられます。
また、現オーナーはメカニックとして従事してきた期間も長く、大掛かりな作業以外は自分の手を汚してきたそうで、現在は消耗品交換、修理以外は大きなトラブルはなく、通勤もこなせるそうです。ただ、Tri-powerのキャブレターは調整が難しく、たまに機嫌を損ね、当時のエアコンも能力不足であるなど、日常の使いをするには問題もあります。
もっともアメリカ車の場合は、たとえオールドタイマーであっても純正部品、リペア部品の供給が安定しており、各部を最新型にコンバージョンするパーツも豊富で、こうした点を解決するのは比較的容易ではあります。それゆえかえって当時のオリジナルをそのまま残すサバイバーな個体は今や大変貴重で、こうした個体を後世に残すこともコレクタブルカーを所有する意義と意味がありますから、乗りたい人にとっては悩ましいところでしょう。理想は純正パーツを保管して、リペアパーツで楽しむ、でしょうか。
アメリカンスポーツを象徴する個性的なデザインを持つC3はコルベットのアイコンといえる1台。特に古き良きマッスルカーを味わえる初期型は状態のいい個体を見つけるのは至難の業といえるでしょう。アメ車の真髄を味わってみたい方にオススメです。
年式 | 1969年 |
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初年度 | 2017年1月 |
排気量 | 6,998cc |
走行距離 | 44,123km |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | モナコオレンジ |
シャーシーNo | 194679S71836 |
エンジンNo | |
車検 | 2020年1月 |
出品地域 | 愛知県 |
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