フィガロは1980年代後半~1990年代前半に起こった空前の好景気であるバブル時代に日産自動車から発売された「パイクカー」と呼ばれる限定生産スペシャルモデルの末弟です。発売当時を知らない世代にとっては、TVドラマ「相棒」の主人公である杉下右京の愛車として認知されているのではないでしょうか?ちなみに「パイクカー」は、最先端技術やスペックなど車の性能を決めるのはエンジニアリングという既成概念を覆し、クルマの開発にアパレル企画集団をコンセプターとして招き入れ、「生活を演出する道具」として造形に時代の空気感やトレンドを取り入れた車でした。フィガロは当時の女性の社会進出促進がテーマで、流行の最先端でパワフルに活躍する女性たちが楽しく乗れる車、がコンセプトだったようです。今見ると単にレトロテイストを盛り込んだスタイルに見えますが、当時は時代の流れとしてレトロ(当時はノスタルジック)なテイストがモダンである風潮があり、新しい感覚だったのです。
車体は初代マーチのシャシー&コンポーネンツに、流麗な2ドアクーペのボディを被せるという構成。性能については全く語られていませんでした。エクステリアは1950~1960年代の欧州テイストと当時流行の兆しを見せていたオープンカーのテイストを盛り込むなど、都会で映えるエッセンスが取り込まれ、外装パネルには樹脂製パネルやフッ素樹脂塗装など当時の最先端技術が投入されました。インテリアもパーソナルな空間をテーマに、心地よいデザインと上質な素材に拘っていました。特に高級ソファーのようなテイストのオフホワイトの本革シートやまるでアクセサリーがちりばめられたようなメーターパネルやスイッチ類など、まさにターゲット層(トレンドリーダーの女性層)が求めるライフスタイルに合わせた時代のエッセンスが随所にちりばめられていました。
短編映画を製作するという異例の宣伝手法や、3回の抽選で購入者を決定するというユニークな発売方法の効果もあってか、限定2万台の枠に対して20万人以上の応募があるなど、高い人気を誇りました。フィガロを含むパイクカーの功績は車の魅力は機能や性能だけでなく、訴求するためにはデザインの力も重要であることを認識させたことに尽きます。いいデザインはいつまでも愛される。フィガロはそう感じさせてくれる1台だといえます。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
この個体は家族間で受け継がれた実質1オーナーです。発売当時、美術系の教師であった息子さんが、一目惚れをして抽選の末に手に入れたのですが、その後結婚し、家族が増えたことで購入3年目にお母様が譲り受け、2019年3月まで愛用されていたそうです。今回の売却理由は免許の返納。「長く愛用してきた車だから、誰か好きな方に乗っていただければ…」という思いでご依頼いただきました。
スタイリングは今見ても新鮮です。カーポート下で28年間保管されていましたが、趣味の車ではなく、日常のアシとして使用されていたため、ペールアクアのエクステリアは全体的に艶が失われ、塗装も色褪せも進んでいました。メッキのモール類も若干のくすみが見られますが、これは磨きで解消するレベルです。ただし、外観は事故歴がなく、モール部分に一部小さな凹みがある程度で、車体のコンディションは良好です。インテリアについては、全体がオフホワイトカラーゆえに、長年の汚れの蓄積が目立ちます。本革シートも運転席にはショルダー部分に傷みも見受けられました。ただし、現在の技術ならば大掛かりな作業まで行わなくとも、ある程度までリペアが可能な範疇。ファッション性の高い車ゆえに、次期オーナーは必ず手を加えておきたい部分でしょう。ただし、運転席は小柄な女性が乗っていたこともあり、座面のヘタリは少なく、助手席に至ってはほとんど使用感がありませんでした。これはかなりポイントが高いです。
特筆すべきは機関系が好調なこと。軽く周辺を一回りしましたが、タービンもしっかりと過給が立ち上がり、今の交通の流れをリードできるゆとりもあります。ミッションも変速ショックが少なめでスムーズです。サスペンションは若干劣化を感じるものの、ダンピング性能は十分残されており、現状は手を加えずとも問題なし。きちんと整備されていることが伝わってきました。記録簿を見るとディーラーでの12か月点検は欠かさず、部品も定期的に交換されていることが確認できました。唯一の欠点はATのPレンジの接点不良。エンジン始動には若干コツが必要なため、普通に乗るには修理することが望ましいでしょう。ちなみに12か月点検を受けての引き渡しとなるそうです。
ボディや内装の経年劣化はありますが、車齢28年ながら、実質1オーナー、事故歴なし、フルオリジナル、しかも機関良好のという個体は今ではかなり貴重。オリジナルに拘るか、自分なりのオリジナリティを求めるのか、ベース車両として仕上げることを楽しみつつ、長く付き合うことのできる1台。いつまでの色褪せない日本のカーデザインの名作をぜひ!
年式 | 1991年 |
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初年度 | 1991年9月 |
排気量 | 987cc |
走行距離 | 71,302km |
ミッション | 3AT |
ハンドル | 右 |
カラー | ペールアクア |
シャーシーNo | FK10-012203 |
エンジンNo | |
車検 | 2020年9月 |
出品地域 | 東京都 |
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