デビューは1963年と、すでに70年近い歴史を刻んでいるポルシェ911は、異例の長寿を誇るスポーツカーです。水平対向6気筒エンジンを車体後部に積む独創的なレイアウトがもたらす走りの個性、更にはアイコニックなデザインが、今に至る厚い支持に繋がっています。
更に言えば、この唯一無二のパッケージングの長所を活かし、引き伸ばす一方で短所を徹底的に潰してきた、不断の進化への努力があったからこそ、今の姿があるのは間違いありません。「最新のポルシェは最良のポルシェ」という常套句は、まさにそうした哲学から来ています。
901と呼ばれた最初期モデルは最高出力130psの水平対向6気筒空冷2.0ℓエンジンを車体後部に搭載して登場しました。当初はリアヘビーな重量バランスなどによる操縦性の難しさが指摘されるものの、のちのホイールベース延長などにより弱点を克服していき、一方で高い出力とそれを路面に確実に伝えるRRレイアウトならではのトラクション性能、ブレーキング時の圧倒的な安定性などによって、スポーツカーとしての確固たる地位を確立していきます。
のちに機械式インジェクションが採用され、1970年には排気量を2.2ℓに拡大。更に1972年には2.4ℓへと拡大していった911は、1974年には北米の安全基準を満たすためにいわゆる5マイルバンパーを採用する大変革を行ないます。
一般に“930”、“ビッグバンパー”と呼ばれるこのシリーズですが、実際の形式名は911のままで、930の形式名が与えられるのは1975年に登場するターボから。SCのモデル名が与えられた1977年以降は、全モデルが930型へと移行します。現在、ポルシェではこのモデルを、1974年の登場時の形式名から取った“Gシリーズ”と総称しています。
当初、2.7ℓがメインだったエンジンは、まさにそのSCで3ℓに排気量を拡大。そして1984年になると、新たに3.2ℓエンジンが与えられ「911カレラ」のモデル名が与えられます。
排気量アップだけでなくボッシュ製インジェクションが与えられたエンジンの最高出力は本国仕様で225ps、日本仕様では217psを達成。遂に、1973年に登場した伝説の911カレラRSを上回ったことから、この栄光の名が冠されたのです。
この通称カレラ3.2は、1989年まで生産が続けられます。その1989年には、フルタイム4WDとされた964型の911カレラ4がデビュー。1990年にはRRモデルもカレラ2として964型に移行して、15年に及んだモデルライフを終了します。まさにスーパーカーブームの時代を駆け抜けた存在ということもあり、熱く思い入れたファンが多いのが、この世代の911なのです。
島下泰久の、この個体ここに注目! |
今回登場するポルシェ911カレラは1988年式ですから、Gシリーズ最後期のモデルとなります。当時のインポーターであるミツワ自動車が輸入した正規ディーラー車です。
ちなみに“カレラ3.2”は登場翌年の1985年モデルからカブリオレの登場と合わせてフロア板厚が増し、1987年モデルからはギアボックスがポルシェ製からボルグワーナー製のG50に改められています。1988年式はまさに“カレラ3.2”の完熟型と言うことができるでしょう。
現オーナーが購入したのは2019年11月。いわゆるワンオーナー車で、この時には“○○33”のナンバープレートが付いた、走行距離約2.3万kmの極上車だったそうです。それまで何台もの空冷911を乗り継いできた現オーナーが、Gシリーズに乗りたいと思い立って懇意の専門店に「出物があったら声を掛けてほしい」と依頼。しばらくして連絡があり、見に行くと「この何十年で一番の個体かもしれない」と言われたとのこと。そして現オーナーも一瞬で惚れ込み、即決購入したそうです。
実車を見れば、それも納得。よく言われる「姿勢の良さ」が遠くから見ても感じられます。ペイントの艶も良く、実際ボディは塗装も含めて一切の補修などを受けることなく、つまりデリバリーされた時と同じ状態のまま今に至っているとのことです。「PORSCHE」ロゴが入ったリアのリフレクターにも、よくあるひび割れはありません。
車体前後にはスポイラーが装着されています。これはターボ用ではなくカレラ用。トランクにノーマルのエンジンリッド用グリルが入っているので、納車の際に取り付けられたのでしょうか。珍しい潜望鏡のような形状のハイマウントストップランプが貴重です。
レザー仕立てのインテリアも同様で、ドアトリムやダッシュボードなどの樹脂は黒黒と深い艶を湛えています。シートの状態も素晴らしく、特に助手席、後席は一度も使われていないのかもしれません。運転席のサイドサポートには、乗り降りの際についたと思われるスレが少々見受けられましたが、簡単に補修できる程度のもの。よくあるキー周辺のためらい傷のようなガリ傷も無く、メーター類の日焼けも無くて、全体の雰囲気は極上と言えます。
フロントフード下のトランク内も良い状態。カーペットのヨレは少なく、汚れもありません。先述のグリルの他に、ポルシェ純正のビニール袋に入った電動空気入れ、昼夜間兼用の停止表示灯が入っていました。これらも新車の時からずっとここに載せられていたのでしょう。
なお、生涯記録簿はすべて残っており、キーもスペアを含めて純正品を完備。マニュアル類も揃っていて、欠けているものはありません。
最後にエンジンルームを見ると、こちらも非常にきれいな状態が保たれていました。うっすらと埃が……ということは、まったくありません。エンジンフードにスリットが開けられているクルマですから、ここを見ても屋内に大事に保管されていたことが容易に想像できます。
現オーナーの元に来てからの走行距離は約3300km。仙台方面への長距離ドライブもトラブル無く、快適に過ごせたそうです。
本当はずっと手元に置いておきたかったという現オーナー。しかし都合により屋内ガレージに停めておくことができなくなり、しばらくは特注ボディカバーをかけて屋外に停めていたものの、やはりそれではクルマがかわいそうだと、断腸の思いで手放すことを決めたそうです。
これだけの程度、これだけの走行距離の“カレラ3.2”が稀な存在であることは、ポルシェ ファンの方には説明の必要はないでしょう。この世代に思い入れのある方は、お見逃しのないように。
年式 | 1988年 |
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初年度 | 1988年4月 |
排気量 | 3,164cc |
走行距離 | 27,098km |
ミッション | 5MT |
ハンドル | 左 |
カラー | グランプリホワイト |
シャーシーNo | WP0ZZZ91ZJS109828 |
エンジンNo | |
車検 | 2020年11月 |
出品地域 | 埼玉県 |
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