ずっと楽しめる元祖911

スポーツカーの民主化を目指した356シリーズ。その後を受けて1964年にデビューした新たなシリーズが911でした。今ではナローという名で親しまれている初代911シリーズです。開発コードは901。当初はそのまま901を名乗ろうとしましたが、二桁目が0となる三桁数字を全てプジョーが商標登録していたため、やむなく911に変更したという逸話はあまりに有名です。

開発は356に対するユーザーの不満を解消する地点から始まります。356はその扱いやすさとパフォーマンスの高さで一躍、モータースポーツシーンでも活躍するスポーツカーとなり、ポルシェの名前を世界へと轟かせる立役者となったわけですが、ユーザーの期待はより高性能であることはもちろん、室内スペースやラゲッジ容量の拡大にも集まっていたのです。人々の声を集約すれば、それは快適なスポーツカーという回答にならざるを得なかった。それゆえポルシェは4シーターモデルの検討まで行っています。高性能化と同時に大型化は避けられない運命にあったと言えるでしょう。このジレンマはその後の自動車の発展にも共通します。

VWタイプ1に由来するRRレイアウトの是非も検討の俎上に上がったようです。けれどもユニークであることを重視した結果、RRレイアウトを踏襲したままで、より高性能なエンジン、つまり6気筒の水平対向空冷エンジンを搭載することに決しました。結果的にこの決定が後々の911シリーズを世界でも唯一無比のスポーツカーとして育てる出発点になったのです。また室内スペースは2+2として、実用性の高さも確保しました。RRであることと、実用的なスポーツカーであること。ナローによって提案された新たなスポーツカーの形がそのまま現代の911シリーズへと受け継がれているのです。

ナローと呼ばれるモデルは、64年から73年にかけて生産された911シリーズのこと。モデルイヤー74年からの901シリーズは新たにビッグバンパー仕様となったことから、78年以降の930シリーズと便宜上同類にカテゴライズされています。

73年までのナローシリーズにも年式によって細かな分類が存在します。初期のOシリーズとAシリーズはホイールベース2211mmというショートボディで、フェンダーも薄く、真のナローと言うにふさわしいスタイルです。モデルイヤー69年のBシリーズからはホイールベースが2268mmまで延伸され、より太いタイヤを収めるためフェンダーにはわずかにフレアが設けられています。

モデルイヤー70年以降のC、Dシリーズでは、それまで2リットルであった排気量が2.2リットルへと拡大されます。さらに72年以降のEおよびFシリーズでは2.4リットルまで引き上げられると同時に、その後の911の定番となるホイールベース2271mmを手に入れました。

901シリーズ用として新たに開発された空冷フラット6エンジンは設計当初から将来の排気量アップも見こしていたことが、一連の年次改良から伺えます。この辺り、さすがはポルシェの設計というべきでしょう。

ナローポルシェの存在をもっとも有名したモデルは、Aシリーズの911Rと、Fシリーズの911カレラRS2.7でしょう。なかでも後者は「ナナサンカレラ」の名で広く遍く世のスポーツカーファンに知られた存在となっています。

近年、空冷ポルシェの人気はうなぎ上りで、なかでもその元祖というべきナロー人気はとどまるところを知りません。特に911RやカレラRSを除いた高性能グレードである911S(スポーツ)の人気がいずれの年式でも飛び抜けているようです。雰囲気を味わいたいというだけであれば、911Tや911E、さらには廉価版の4気筒モデル、912を検討する価値も大いにあるでしょう。


西川淳の、この個体ここに注目!

マニア垂涎の最終型ナローで特殊なモデルを除くシリーズ最強のカタログスペック(190ps)を持つ73年型911Sの登場です。

現在のオーナーは10年ほど前にこの個体を某有名ショップにて購入。メカニックが愛車として乗っていた個体でもあったため機関の調子こそ上々であったものの、内外装の状態は年式相応にやれていたそうです。ボディも白にリペイントされていました。そこで現オーナーは3年前に外装のレストレーションを敢行。オリジナルのボディカラーへと戻しています。

もっとも、その仕上げはコンクールコンディションというものではなく、あくまでも日常的に気持ちよく量産ナロー最強の走りを楽しむための化粧直しだと思ってもらった方がいいでしょう。逆にいうと、ここからさらに仕上げる楽しみがある。細かな傷やヒビ、塗装浮きなどを気にする方には向きません。

またエンジンや機関系の装備、タイヤサイズ、ストラットタワーバーなどオリジナルではないパートも散見されます。なかでもブレーキはボクスター用へとグレードアップされています。オリジナルパーツも残っているようです。エンジンナンバーはマッチングしているようですが、所々に改造が見受けられました。全体的に言って、いたって走り重視のモディファイが施されているドライブを楽しみたい人向けの個体と言っていいでしょう。

コレクションに加えると同時に切れ味の鋭い、ロングホイールベースナローSに特有の人車一体の走りを楽しみたいという方に絶好の一台です。

車両スペック

年式1973
初年度19739
排気量2,341cc
走行距離63,000km
ミッション5MT
ハンドル
カラーブラウン
シャーシーNo
エンジンNo
車検20236
出品地域静岡県
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
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