1950年代前半に英国コヴェントリーのスタンダード−トライアンフ社によって開発された2シーターのロードスターモデルがTRシリーズです。TRとはトライアンフ・ロードスターの頭文字でした。
52年にプロトタイプのTR1が発表されるや、市販を期待する声が高まります。スタンダード社は量産を決意。TR2として53年から生産を始めることになりました。
既に他のモデルで使っていたラダーフレームのシャシーをベースに、フロントはダブルウィッシュボーン、リアにはリーフリジットのサスペンションをそれぞれ備え、パワートレーンは2リットル直4OHV+4速マニュアルミッションという構成の、比較的安価なスポーツカーとして誕生したのです。他の英国ブランドと同様に、オープンモデルの開発は勢いのある北米市場を睨んでの企画でした。
55年にはTR3へ、そして57年にTR3Aへと進化。年代がそこそこに古い(50年代)割にはメンテナンスやドライブが比較的容易で、しかも競技向き、価格も安定していることから、初心者からベテランまで広い範囲の支持をうけるクラシックカー界の定番セレクトとなっています。
1961年になると、基本的なメカニズムを流用しながらも、エクステリアのデザインをイタリアのカロッツェリア、ミケロッティに依頼。トレッドが広げられ、フルワイドボディのモダンなロードスターとして生まれ変わります。2.1リットル版エンジンを標準装備とし、2リットルは以前とは逆に無償オプションとなりました。その他、ステアリングギアボックスはラック&ピニオン式に、4速マニュアルトランスミッションもフルシンクロ化されています。
65年には課題であった“走りの老朽化”を改善すべく、リアサスペンションをセミトレーディングアームとしたTR-4A IRSへと進化しました。さらに67年には2.5リットルの直6OHV+機械式インジェクションエンジンを積んだTR5も登場(北米版はキャブレター仕様のTR250)しています。
TRシリーズはその後、カルマンデザインへと姿を変え、TR6、TR7、そしてV8を積んだTR8まで生産されることになったのです。
西川淳の、この個体ここに注目! |
もっとカジュアルに、気兼ねなくクラシックスポーツカーを楽しみたい。現オーナーのそんな思いが詰まった一台です。
正直に言って、ミントなコンクールコンディションはおろか、いわゆるレストレーションレベルでもありません。人気のブリティッシュグリーンにリペイントされた状態は全般的にポツポツと汗が浮いており、前後バンパーなどメッキパーツにも錆浮きが散見されます。
けれども、少し離れて見ればとてもしっかりとしている。くたびれた印象がないのです。よくよく調べてみると、フレームがこの年代のトライアンフにしては非常にキレイ。2.1リットルエンジンも、おそらくオリジナルはゼニス・ストロンバーグキャブレター仕様だったと思われますがミクニ・ソレックスに換装されており、ワンオフのマフラーにロールゲージ、モト・リタのステアリングホイール(ノンオリジナル)などを装備、ラジエター周りにも熱導入の工夫がされているなど、以前のオーナーはガレージで鑑賞することよりも走らせることに重きをおいた方だったことがわかります。
現オーナーの手でさらに基本的な走りの機能をブラッシュアップ。ブレーキのキャリパーやホース&パイプ、電磁ポンプなどを交換しており、しばらくはこのまま手を加えずに楽しめそうです。
エンジンも一発で始動し、快調に回ってくれました。シャシーの構造上、その走りは古典と呼んだ方がいいものでしたが、逆にシンプルなメカニズムに拠って走らせる感覚が新鮮で、いかにもクラシックカーを楽しんでいるという気分になります。おそらくソフトトップもリニューアルされたものでしょう。状態は上々でした。
クラシックカーの価値が増すなかで、端正なイタリアンスタイリングのオープンエアモータリングと、古典的なブリティッシュスポーツの走りの両方をカジュアルに楽しむことのできそうな当個体は、この世界への入門用としてはもちろんのこと、ベテラン用のいつでも楽しめる常備マシンとしても、面白い存在になることでしょう。
年式 | 1963年 |
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初年度 | 1988年12月 |
排気量 | 1,991cc |
走行距離 | 88,000km |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | グリーン |
シャーシーNo | 12749CT |
エンジンNo | |
車検 | 2023年7月 |
出品地域 | 愛知県 |
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