ドイツのフォルクスワーゲン・タイプ1と並ぶ、20世紀の大衆車であるのが、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が生んだミニです。1959年から2000年まで、41年間に渡って製造され、総生産台数は約539万台を記録。VWタイプ1同様に、派生車も数多く登場するなど、英国の小さな巨人は今なお世界各国で愛され続けています。ちなみに、2001年から生産されている2代目がニューミニの愛称でデビューしたため、初代はそれ以降、クラシック・ミニ、ローバー・ミニなどと呼ばれ、区別されています。
ミニの誕生の背景には1956年に勃発した第2次中東戦争が大きく関与しています。戦争の勃発により、ヨーロッパ諸国への石油供給がままならぬようになりました。このオイルショックに対応するためにBMCで開発が進められた「ミニマムカー」がミニでした。
"Small outside、Bigger inside"。
できる限りコンパクトなボディに、無理なく4人の大人と荷物を積むことができ、かつ経済的に走れること。後のホンダのMM構想にも通ずる開発条件をクリアするため、エンジンの下にミッションを配置する2階建て構造によるエンジンルームの最小化、10インチタイヤの採用で室内への張り出しの低減、金属バネではなくゴム製のラバーを使用しコンパクト化されたサスペンションなど、数多くの革新的な試みが行われました。この画期的なメカニズムを、当時としては類を見なかった高効率な2ボックス・デザインに詰め込むことで、理想を現実に落とし込むことに成功したのです。
1959年に発売開始されたミニは、オースチンとモーリスという2つのブランドから発売されています。2台のクルマの違いはフロントグリルのデザインとブランドを表すエンブレム程度で、現代でいうバッジ・エンジニアリングの走りでもありました。エンジンはBMCが当時ラインアップしていた中で、一番小さなA型と呼ばれる848㏄のOHV。34㎰/6.08㎏‐mというスペックでしたが、600㎏という軽量なボディにより、その走りは想像以上に軽快でした。最大の魅力は、クイックなステアリングレシオと10インチのジャイロ効果によるゴーカートのような機敏なハンドリングです。高い実用性とスポーティな走りにより、ミニは販売台数を伸ばし、その人気は全ヨーロッパ、北米へと広がっていきました。
ミニの販売台数増を後押ししたのは高性能仕様のクーパーの存在でした。排気量アップとツインキャブレターで武装したクーパーはレギュレーションに合わせて様々な仕様が誕生し、サーキット&ラリーで大活躍しました。特に英国を代表するモンテカルロラリーでは並み居る大排気量のライバルを抑えて、1964年、65年、67年の3回の総合優勝を飾るなど、その実力は世界から高く評価されることになります。
1967年にマイナーチェンジが行われ、998㏄仕様(38㎰/7.28㎏-m)が追加され、1969年にはドアノブがアウター式からインナー式に、ウインドウがスライド式から巻き上げ式に変更になるなど、時代に合わせて洗練さを増していきます。1960年代後半からは、次期モデルの開発も進められていましたが、度重なる合併、統合、国営化などにより、実現することはなく、姿、形は大きく変わることなく、生産が続けられたことで、1980年後半になると、販売戦略車でではなく、ブランドアイコンとして生き残ることになります。
1992年以降はエンジンがインジェクション仕様の1271㏄となり、1997年にはSRSエアバック&サイドインパクトバーが装備されるなど、信頼性向上、安全対策、装備の充実を図りながら、延命が続けられてきましたが、ニューミニ登場を翌年に控えた2000年10月に生産終了が決定。長い歴史に幕を閉じることになったのです。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
41年間、大きく姿を変えることなく、生産され続けてきたミニ。古いものはヴィンテージとして人気が高く、1992年以降のインジェクションモデルは、安全装備&快適性を備え、今も安心して乗れるミニとして安定した相場を形成しています。その狭間にある1980年代個体は、ローバー・ジャパンが健在であった1990年代後半、人気の低下に伴って粗末に扱われていたため、多くのの車両が市場から姿を消しています。ただ、1967年から続く、ミニ伝統の1000㏄は吹き上がりも軽く、小排気量ならではの、高回転まで引っ張る楽しさがあります。また、80年代中盤以降のモデルはタイヤが後期モデルと同じ12インチ、前輪がディスクブレーキとなるなど、走りの基本性能は後期型に準じており、古き良き香りを残しながら、安定した走りも楽しめるバランスモデルとして、近年注目されています。
今回、紹介するミニはその不遇の時代を生き延びた1986年式。しかも、オースチン・ローバー・ジャパンに引き継がれる以前の輸入代理店、日英自動車が取り扱った最終のHLです。ちなみに、事業譲渡は1985年7月に終えているのですが、過渡期であったためか、日英自動車製の1986年式をマーケットで見かけることがたまにあります。
現オーナーは2014年に東京都府中市にあるミニ専門店「スタンモアー」でメンテナンスを受けていた個体を中古車で購入。前オーナーの流れを継続し、同店で定期的に点検・整備を受けながら乗り続けてきたそうです。美しい色艶をキープするボディ、隅々まで手入れが行き届いた内装など、一目見ただけで大切にされてきたのが伝わってきました。エンジンはアイドリングも静かで、回転も極めて安定しています。
この個体の特徴は内外装を含めて、隅々まで手が入れられたカスタムカーであることです。
外観は定番のミニクーパーMk1仕様で、社外ダンパーを組み込んで車高も程よくダウン。ボディカラー(シナバーレッド)に合わせて赤系を主体に見直されたインテリア&シートに、時間を掛けてセットアップされたことが想像に難しくないバッジ、小物類、各種スイッチなど、まさに趣味の究極形といっていいほどの仕上がりで、隙なく決まっています。
「今回は、長期の海外赴任が予定されているため、断腸の思いでの出品です。元々内外装に多少手が入ったクルマでしたが、スタンモアーさんに相談しながら、ああでもない、こうでもないと楽しみながらコツコツと自分好みに仕上げています。特にビンテージミニの時代に発売されていた当時ものの部品を収集し、拘りをもってレイアウトしてきました。中には現在では、手に入れることがほぼできないパーツも多く、その価値、そして趣味嗜好までご理解いただける方にご購入いただければ嬉しいですね」とは現オーナーの弁。
マイナスポイントは運転席ドアヒンジの塗装剥がれと、運転席側の後輪ホイールリムの欠け、リアウインドウモール上部のひび割れ程度。下回りに塗装の剥がれが数か所見られますが、全体に錆もなく、34年落ちの個体であることを考えれば、抜群のコンディションでと言えるのでないでしょうか?
現オーナーの愛着がひしひしと感じられ、オリジナリティに溢れるミニ。モディファイの方向性に共感できる方、プレミアなパーツを好むマニアックな方はもちろんですが、ショップのデモカー並みに完成度は高いので、ハレの日の1台を手にする感覚で、選ぶのもアリではないでしょうか?
年式 | 1986年 |
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初年度 | 1986年6月 |
排気量 | 998cc |
走行距離 | |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | シナバーレッド |
シャーシーNo | 99X3419N |
エンジンNo | |
車検 | 2021年6月 |
出品地域 | 東京都 |
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