フォルクスワーゲン・タイプ2とは、1950年に登場し同社の黎明期を支えた小型トランスポーターです。日本では「ワーゲンバス」の愛称で親しまれ、写真を見れば「ああ、あのクルマね」とクルマ好きならば誰もが即座に理解できるのではないでしょうか。
ちなみにタイプ2は車名ではなく、フォルクスワーゲンとして2番目の型式を意味しています。タイプ1として知られる初の量産車、通称「ビートル」、のシャシーをベースに大幅な強化を施したコンポーネンツに、フルキャブオーバーのワンボックスボディを被せて製造された派生モデルです。
そのアイコニックなデザインのみならず、独立懸架による乗り心地のよさ、シンプルかつ極めて丈夫なボディ、荷下ろしのしやすい低床フロア、粘り強く耐久性の高い空冷水平対向4気筒OHVエンジンなど、商用車としての基本性能に優れたスペックを有していました。さらにバン、ピックアップ、バス、トラック、救急車など幅広いバリエーション展開も可能で、すぐさま世界各地で人気を博し、ビートルとともに1950~1960年代のフォルクスワーゲンの隆盛に大きく貢献したのです。
タイプ2の名前を一躍有名にしたのは、1967年まで生産された初代のT1(トランスポーター1。現行車はT6と呼ばれています)です。発売当初は実用車として販売台数を伸ばしましたが、丸みを帯びたその愛くるしいスタイル、シンプルで平面なボディであるがゆえに、モディファイのベース(素材)として楽しめることもあり、特に1960年代後半はアメリカで、格安となっていたT1にサイケデリックなペイントを施した改造車がヒッピームーブメントのアイコンにまでなりました。
2000年代にはカルフォルニア発祥の「キャルルック」と呼ばれる原色系のカスタマイズの代表車種として、日本でも火が付き、その後はヨーロッパでも盛り上がりを見せるなど世界中で幾度となくブームを起こしています。しかもムーブメントを起こすたびに、価格は高騰を続け、特に希少な初期モデルやマルチウィンドウを持つマイクロバス・デラックスなどは、オークションで1000万円超えのプライスで落札されることもあり、コレクション価値は年々高まっています。
一般的には手が届かない存在になりつつありますが、実用車としても、そしてファッションアイテムとしても、タイプ2(T1)は間違いなく一時代を築いた名バンと言えます。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
ドイツ語で「国民車」を意味するフォルクスワーゲン。グループ全体で3年連続世界一の販売台数(2016~2018年)を誇るなど、今やドイツだけではなく、ワールドワイドな国民車といえます。そのフォルクスワーゲン車をコレクタブルカーの目線で見るならば、半世紀以上生産された空冷エンジンをリアに搭載した一連のモデルは候補に挙げてもよいのではないでしょうか?2ドアモデルを主に取り扱うCARZYの観点でいえばタイプ1と呼ばれる「ビートル」となりますが、今回エントリーされたのは元祖ミニバンといえるタイプ2。「果たして基準に見合うのだろうか?」という事前の心配は実車を見た瞬間、杞憂に終わりました。
取材車両はラインアップの中で豪華仕様となるマイクロバス・デラックス。1963年式はアーリーモデルとしてシリーズ後半に当たりますが、15ウインドウと呼ばれるリアのコーナーウインドウを持つ最終モデルであり、タイプ2のアイコンともいえるサファリウインドウを備えるルックスはVWのビンテージとしては価値あるポイントと言えます。また、現オーナーが車両を引き継いだ時に「大人が乗って様になり、現代でも安心して走れるこだわりのVWバスを作りたい」という思いで、オリジナルの雰囲気を損なわず、内外装を含めて徹底したレストレーションを施しています。フレームアップされ、防錆対策が施された下回りのシャシー、パテをほぼ使うことなく、叩き出しで成形されたボディなど、細部まで確認すればするほど、妥協なく作りこまれていることが誰にでも理解できるはずです。2000年前後に日本で流行したキャルルックは現オーナーの好みですが、ローダウンに合わせてアライメントを見直すことで、乗り心地とハンドリングも癖なく良好。新品の1600㏄に換装されたエンジンもセッティングを詰めることで、長時間のアイドリング状態でも完調をキープするなど、普段使いもこなせるように仕上げられているのもポイントが高いといえます。
また、各シートはオリジナルをベースに当時とほぼ同じ素材を使って再生。カーペットなども当時と同じメーカーが再生産した材料を使ってやり直すなど、雰囲気を重視して仕上げられていました。ボディサイドからフロントフェイスに向かって走るメッキモールや取り付け部に使われているネジ、ウィンドウのヒンジ、各ウィンドウなどはオリジナル品で傷みが出ている部分も正直あります。交換することで美しさに磨きがかかりますが、ピカピカではなく、少し使い込んだ雰囲気もビンテージカーには必要ではないでしょうか?
個体の純度も高く、これから価値が高まる可能性が高い15ウインドウ・デラックス。しかも、隅々まで手が入れられたことで現代の道路事情でも過不足なく走れるタイプ2。手にすれば豊かな人生を過ごす相棒としてロハスな時間を与えてくれることでしょう。
年式 | 1963年 |
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初年度 | 1999年8月 |
排気量 | 1,600cc |
走行距離 | 111,484km |
ミッション | |
ハンドル | 左 |
カラー | チョコレートブラウン |
シャーシーNo | 1047298 |
エンジンNo | |
車検 | 2020年9月 |
出品地域 | 兵庫県 |
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