国産車史上最も美しいクーペは何か。そんなお題が出ると必ず名の挙がるモデルにいすゞ117クーペがあります。1968年12月に発売され、以降81年まで長らくいすゞ乗用車のフラグシップとして生産されました。
いすゞがブランド認知度をあげるべくスペシャリティモデルの開発を決意し、そのデザインをイタリアのカロッツェリア・ギアに依頼したのは60年代半ばのこと。当時、ギアにはベルトーネから移籍したジョルジェット・ジウジアーロがおり、彼が統括した最初のプロジェクトでもありました。
65年12月にギアへ転籍したジウジアーロは翌年3月のジュネーブショーに向けていすゞプロジェクトを敢行します。そうして登場したのがいすゞギア117スポルトでした。その美しいクーペスタイルでこの年のショーにおけるコンクール・デレガンスを獲得。ちなみにそのシルエットがよく似ていると言われるベルトーネデザインのフィアット・ディーノ・クーペがデビューするのは67年3月、つまり117スポルト登場の一年後のことでした。
1968年12月にデビューした生産型は新たに117クーペと呼ばれ、ジウジアーロのデザインコンセプトを内外装ともにほぼ再現していました。それゆえ生産化にはたいへん苦労しており、なかでも73年まで造られた初期モデルは手作業を大いに要したことから生産数も少なく(2458台)、今では「ハンドメイド」(HM)シリーズと呼んで、マニアの間では珍重されています。
当初は新開発の1.6リットルDOHCユニットのみ(ミクニソレックスツインキャブレター付き120psと日本初電子制御燃料噴射付き130ps)でしたが、後に1.8リットルSOHCのSUツイン(115ps)や廉価版SUシングル(100ps)なども登場しました。ハンドメイド時代における130psの最高峰モデルはECと呼ばれ、生産台数もわずかに140台程度と言われています。117クーペECの車両価格187万円は現在の感覚に換算するとおそらく一千万円近くになることでしょう。大変高価なモデルでもあったのです。
71年にGMと提携したいすゞは、117クーペの生産合理化にも成功します。73年以降のマイナーチェンジモデル(1.8Lのみ)ではその生産台数が飛躍的に向上したのです。改革前後直近の生産台数を比べるとおよそ10倍もの開きがあったようです。
77年に再びマイナーチェンジを実施。117クーペは第三世代となりました。特徴的な丸目4灯ヘッドライトは角目4灯に改められ、エンジンもついに2L仕様が登場するまでに。またレアなディーゼルエンジン搭載モデルも登場しています。
117クーペの後を継いでいすゞブランドのフラグシップとなったのは、同じくジウジアーロ(イタルデザイン)によるピアッツァで、これもまた日本車デザイン史に大きくその名を残すモデルとなります。
西川淳の、この個体ここに注目! |
1.6リットルDOHCエンジンを積んだPA90、それも最初期(乙種)の「ハンドメイド」シリーズに間違いありません。事実上のワンオーナーモデルで、和(歌山)のシングルナンバーが残っています(残念ながら「和」シングルナンバーの継承はできません)。現在の所有者は外国人で、日本でこのクルマを使用した形跡はなく、オドメーターの4.7万キロは実走行距離だと考えてよさそうです。
ボディの左側面のみ塗装と鈑金をやり直してありますが、それ以外はノンレストアのプリザベーション。エンジンやインテリアの“使用感”をみても、だいたい3,4万キロといった雰囲気で非常に落ち着きのある佇まいをみせていました。117クーペといえば西陣織の窓枠が有名ですが、この個体のコンディションは良好で色合いも鮮やかに残っています。
しばらくぶりにエンジンを始動したようでしたがすぐに目覚めてアイドリングも安定しており、機関のコンディションは上々だと言えます。
残念ながらオリジナルホイールはありません。現在は15インチのワタナベを履いていますが、オリジナルサイズの14インチタイヤを合わせたクロモドラホイールの5本セットが付属します。イタリアンデザインにはそちらの方がベターな組み合わせと言えるでしょう。もちろん好みではありますが。
日本とイタリアの合作による名車です。ジウジアーロの代表作でもあります。非常に良好なコンディションの初期型ハンドメイド117クーペをさっそうと駆って、クラシックカーラリーデビューしてみるというのはいかがでしょう。
年式 | 1969年 |
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初年度 | 1969年 |
排気量 | 1,584cc |
走行距離 | 47,700km |
ミッション | 5MT |
ハンドル | 右 |
カラー | 白 |
シャーシーNo | PA90-5200262 |
エンジンNo | |
車検 | なし |
出品地域 | 群馬県 |
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