1964年、ドイツの本格スポーツカーとして華々しいデビューを飾ったポルシェ911(901型)でしたが、フルモデルチェンジを行うことなく、長きに渡って生産を続けた結果、1970年代に入るとそのカリスマ性にも陰りが見え始め、販売は落ち込みました。その状況を打破すべく、ポルシェ一族から経営を引き継いだエンルスト・フールマンの主導のもと、ラインアップの拡充を図りつつ、新世代ポルシェの機軸を目指して設計されたのが、924と928でした。911のRR方式ではなく、コンベンショナルなFR方式を採用しているのが特徴です。
924はこれまでの914と同じく、エントリーモデルとしての役割でしたが、928はフェラーリやアストンマーティンといったプレミアム市場への参入を目的として、ラグジュアリーなGTとして企画・開発されました。車両販売価格も911よりも高額で、装備も豪華。フラッグシップモデルとしての役目を担いました。
今見ても古さを感じさせない曲面基調の近未来的なスタイリングもさることながら、重量配分の最適化を狙ったトランスアクスル式ミッションや4WSの先駆けとなったバイザッハ・アクスル機構、ボディパネルのアルミの多用化など、ポルシェの新世代スポーツカーらしく、見た目もメカニズムも先進性に富んでいました。そのコンセプトやデザインはその後に登場した多くのラグジュアリー系スポーツカーに影響を与えています。
また、928は1977年~1995年まで18年に渡って生産され、現時点ではポルシェ史上最も長く生産されたモデルでもあります。基本骨格に大きな変化はありませんでしたが、フロントに搭載されるV8エンジンは初期の4.5リットルSOHC(240㎰)からスタートし、4.7リットルSOHC(270㎰~300㎰)、5リットルDOHC(292ps~330㎰)、そして最終的には5.4リットルDOHC(350㎰)まで拡大されています。各部は何度もブラッシュアップが図られ、いつの時代も一線級の性能を保持していたのは、大黒柱といえる911に対するフラッグシップの意地だったのかもしれません。結果的に、タイヤの進化や4WD機構の採用などで、911は継続され、逆に代替わりする予定であったFRスポーツカーが次々とフェードアウトしてしまったのは何とも皮肉な話です。ちなみに、928のコンセプトは14年後の2009年にデビューした4ドアのパナメーラに受け継がれています。
ポルシェがその存続をかけて、時代を先取りした技術と色褪せないルックスと現代でも見劣りしないパフォーマンスを兼ね備えた928は、今後さらに市場で評価が高まり、高騰する可能性があります。最終モデルでも販売から24年が経過していますから、程度のいい個体も消えつつあります。購入を考えているならば、早めの決断がコレクタブルカーライフを豊かなものにするでしょう。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
現在のユーズドマーケットに存在する928は、ほとんどがモデル後半のS4やGTSなのですが、今回紹介するのは1979年式。サブネームが付かない素の928です。後期モデルばかり見慣れているせいか、エアロパーツや装飾物のない初期モデルは実にシンプルで、クリーンな印象です。遠くで眺めると丸みを帯びたボディなので小さく感じるのですが、近くで見るとサイドにグッと張り出したマッシブなデザインに圧倒されるはずです。
1970年代後半のスーパーカーブームにおいても、そのSF映画やアニメに出てくるようなその独走のスタイルは、ランボルギーニやフェラーリといった王道スーパーカーとは一線を画する存在感がありました。同世代を駆け抜けたクルマ好きからも「928のデザインには衝撃を受けた」という声は少なくありません。現オーナーもその一人で、所有する928は30年かけてオリジナル度の高い初期型を探し、昨年ようやく手に入れたという個体。「そこまでして手に入れたのになぜ手放すのですか?」と伺うと「私がスーパーカーブームの時代に、目を奪われたのは白の928。現在のガンメタも購入当初は嬉しくて仕方なかったのですが、時間が経過すると、やはり納得ができないという自分がいたのです。コレクションにするならば、その当時の思いも含めて、手に入れたい思いがあります」とのこと。理想に近づけるようにと、都度リフレッシュが施され、現在も進行形ではありますが、ほぼ90%は仕上がっています。納車時は整備が施された上で、新オーナーに手渡されますが、ラインオフから40年以上が経過しているクルマですから、後々手間がかかる=愛情の証であることはCARZY読者ならご承知の通りでしょう。
詳細をお伝えすると、2オーナーで、助手席側リアパネルのみ板金塗装歴ありですが、傷や凹み、色褪せなどが少なく車齢を考えると良好です。エンジンは一通りの整備が施され、ボンネット裏のインシュレーターは張り替え済み。インテリアはすべてを取り外して全面清掃が施され、ダッシュボードを含めてパネル類に浮きや割れはほとんどなくオススメできます。チェッカー柄の布地シートは紫外線による劣化で、後席上面の表皮は張り替えていますが、それ以外はオリジナルコンディションをキープ。鬼門といわれるエアコンは新品に交換され、修理中のアクチュエーターによるドアロック開閉を除けば、各部スイッチも正常に作動します。機関面ではクラッチにやや摩耗が見れましたが、年式を考えれば文句のないレベルといえるのではないでしょうか。
性能面や安心感で言えば後期モデルとなるのですが、本来の928の魅力を味わいたいのならば初期モデルに勝るものはありません。希少なオリジナルモデルを次世代に繋ぐバトンを託せる方に購入いただきたいものです。ちなみにポルシェクラッシックを通じて、現在も部品の購入は可能となっています。
年式 | 1979年 |
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初年度 | 1979年7月 |
排気量 | 4,474cc |
走行距離 | 66,107km |
ミッション | 5MT |
ハンドル | 左 |
カラー | シルバー |
シャーシーNo | 9288100166 |
エンジンNo | |
車検 | 2020年7月 |
出品地域 | 愛知県 |
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