ロッキーが汗と涙のスポーツで“男の生き方”に影響を与えたとすれば、血の涙とバイオレンスでそれを強くイメージさせたのは、同じ時代のマッドマックスだった。
低予算で作られた映画…。それゆえ、演出を超えて不気味なまでにリアルであり、強い男を目指す若者のシンボルとなったのだ。そして、登場するクルマもまた、筋骨隆々で不気味な迫力に満ちていた。
オーストラリアで撮られた映画(それゆえ、メル・ギブソンの出世作)だったため、使用されたクルマはオーストラリア・フォード製で、72〜76年まで生産されたファルコン(XBタイプ)クーペという、日本人のわれわれには馴染みのないモデルである。
おそらく、ベースモデルの姿を見ても、それがマッドマックスに出ていたアレか、とはとうてい思わないことだろう。マッドマックスに“出演”していたファルコンは、“パースート・スペシャル”(インターセプター)と呼ばれ、顔つきがまるで変わっていたからだ。もし、貴方が注意深く、インターセプターのリアセクションを見ていたならば、かろうじてファルコンハッチバックであると判別できたかも知れない。エンドピラーとリアランプのユニークなデザインが、ファルコンの特徴である。
那須PSガレージには、二台のインターセプター・レプリカが収まっている。マッドマックス第一作用モデルと、第二作目のロードウォリアーに登場していたモデルだ。基本的に、いずれの個体も、映画と同様に、XBファルコンクーペをベースとして、入念に再現されている。“できるだけ劇車に忠実に”というオーナー松原氏(松ちゃん、ね)のこだわりを反映したものだ。
もちろん、単なるお飾りではなく、劇中車さながらに爆走可能。こうして飾るだけなら、何もそこまで入念に作りこまなくてもいいのに、というところまでしっかり製作されている。他の展示車両と同様に、松ちゃんのこだわりは“高性能をちゃんと発揮できること”にある。それゆえ、このインターセプター二台も、パワートレインには徹底的にこだわった。毎日乗らないのが、もったいないくらいの仕上がりレベルで、その驚異の詳細は、那須PSガレージのウェブサイト(展示車両紹介のなかにあるメイキングリポート)が詳しいから、ぜひ一度、覘きにいって欲しい。第一作用と第二作ロードウォリアー用との、ディテールの違いなども詳しい。
そして、この二台を作ったのもまた、例のオーストラリアの二人組(ゴードンとグラント)だった。そう、バットマンカー/タンブラーの製作は、この二台のマッドマックス・インターセプターという実績をベースに、作られたものだったというわけなのだ。
ロードウォリアーはともかく、第一作目用のインターセプターなら、街乗りで使ってみたいと思う。こんなマシンを駆っていれば、“オレだって北斗の拳”、になれそうな気がしてならない。