試乗取材はコンディション抜群のノーマル・デロリアンだったけれど、館内には“ひょっとして劇中車?!”と、わが目を疑わんばかりのデロリアンタイムマシンのフルコピー車両が展示されている。
コノ夏、ボクはモンテレーのミュージアムで本物の劇中車両を見て来たが、その出来映えはほとんど変わらなかった。なるほど、本物には本物らしい使用感があって、それが独特のオーラを放っているわけだが、こちらのコピー車両にも、それに負けない存在感はある。
なにしろ、劇中車両の製作に関わった連中が、可能な限り当時の資料や写真を集め、それを参考にディテールまでこだわって再現した個体だからだ。リアルな展示物としての使命を果たすためだろう、細かな作りはこっちの方が上なんじゃないか、とさえ思う。
特に、インテリアは圧巻だ。今となってはレトロなデジタル調だけれども、特別に許可を得て乗り込めば、“ドク気分で本当にタイムスリップ…”は言い過ぎだとしても、懐かしいアノ旋律とともに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観たころの、そう、劇中におけるマーティの両親の若い頃のような、ちょっと甘酸っぱい記憶が蘇ってくる。なるほど、これは心のタイムマシンなのだった。
ちなみに、下の三点の写真(撮影/ 篠原晃一)が、モンテレーに転じされていた“ホンモノ”。PS ガレージ収蔵レプリカの“出来具合い”がよく分かるだろう。
映画に登場したクルマたちには、音楽と同じように、心や気持ちをタイムスリップさせる力がある。好きだったシーンは、一枚の絵画のように頭に焼き付いていて、そこに登場するクルマと実際に再会したならば、そのシーンを見た頃の自分の想いや、置かれた状況、ひょっとすると匂いのようなものまで、思い出してしまう。それが、甘かろうが苦かろうが、このうえなく心地よかったりする。
青春時代に観た映画なら、なおさらだ。そういう意味で、デロリアンタイムマシンは、ボクと同世代の多くの人の記憶を、ゆさぶり続けることだろう。
未来に向けて…。