クルマそのものが、こんどは映画産業によってソフトに復活を果たす。バック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシンベースに採用されたからだ。
なるほど、どこのメーカーにも恩に着たり恩を着せたりすることなく、最もタイムマシンベースにふさわしいクルマを選べと言われたら、80年代前半のこと、ボクだってデロリアンに行き着いただろう。冷蔵庫より格段に格好いい!ことによれば、マイケル・J・フォックスやクリストファー・ロイドよりも“適役”だった。
映画の大ヒットとともに、デロリアンにつきまとっていた暗いイメージは一掃されることになる。
そして、DMC-12 は、あの映画に出ていたタイムマシンとして、世界中の認知を、新たな人気を得るに至った。以降、ハード面よりもソフト面で全てが語られる、珍しいクルマになったのだ。
それゆえ、ベースとなったデロリアンそのものに、焦点が当てられることも、今となってはほとんどない。マトモなインプレッション記事だって、これほど認知度のあるモデルにも関わらず、再録されることがほとんどない。あったとしてもきっと誰も読まないだろう。ひょっとすると、せっかくいい“夢”に転じたのだから、そのままにしておけ、という神の思し召しなのかも知れない。
というわけで、ボクが今回、通常の展示車両(こちらは劇中タイムマシンに限りなく似せて作ってある)ではなく、那須PSガレージのヒミツの格納庫に“たまたま”あった、極上のナンバー付きノーマル車両(こんな上モノ見たことない!)に運良く試乗できたからといって、マトモなインプレッションをやっておこう、などとは、まったくもって思わなかった。
やっぱりコイツには、マーティかドクになった気分で乗らなきゃ、ウソだ。過去だろうが未来だろうが現代だろうが、どこへでも行ってみやがれ!なんてノリで乗るのが、デロリアンにはふさわしいと思う。ジョンのクルマ造りへの熱い想いを汲みつつも、やっぱりボクらにとっては、あのタイムマシンのデロリアン・・・。それでいい。