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Pebble Beach Concours d'Elegance 2011: Pebble Beach Golf Links

ペブルビーチ・コンクールデレガンス × ペブルビーチ・ゴルフリンクス
words / Jun Nishikawa

クラシックカー世界一を決める、世界最高峰のビューティコンテスト
驚愕のヴィンテージカー200台、大集結!

世界中のクルマ好きが集結するモントレーの週末。そのハイライト、〆のイベントが、ゴルフプレーヤー垂涎のコース・ペブルビーチ・ゴルフリンクスの18番ホール・フェアウェイで開催される、ペブルビーチ コンクール・デレガンスだ。2011年に61回目を迎えたというから、自動車100年の歴史にあって、その半分以上を“見つめて”きた、歴史あるイベントだといっていい。
それゆえ、このコンクールに招かれたクルマは、それぞれの属するカテゴリーにおいて、事実上、「もっともオリジナルに忠実で、もっとも美しいコンディションにある」、との評価を得たも同然というわけで、個体の評価はいっきに上がる。世界中のコレクターが、こぞって参加したがるのも、当然だ。
展示は、例年、いくつかの常設テーマに特別なテーマを加えておこなわれる。たとえば、2011年のコンクールでは、1915年までのアンティークモデルを集めたクラスAにはじまり、アメリカンクラシックや、ユーロピアンクラシック、戦前、戦後のスポーツカーといった注目のカテゴリーが目白押し、そして近年注目されはじめたイタリアンレーシングモーターサイクルのクラスXまで、実に30ものクラスに分けられていた。特別な展示としては、メルセデスベンツの125周年や、フェラーリGTOの50周年、スタッツ特集、などがあり、たいていブランドやモデルのアニバーサリーを祝う形式である。
それぞれのテーマに沿った200台が、ペブルビーチの18番フェアウェイに集結・・・。クルマ好きにとって、そのパノラマは、とてもこの世のものとは思えない、まさに絶景なのであった。
コンクールというからには、ジャッジがいて、プライズがある。20年以上、なかには30年以上の経験をもつ熟練の審判がチームを組んで、担当のクラスを評価してゆく。くわえて、毎年、名誉ジャッジとして、自動車業界内外から多くの有名人やデザイナーが招かれるのも特徴だ。2011年には、ウルリッヒ・ベッツ(アストンマーチン)やゴードン・マーレー、アンドレア・ザガート、スターリング・モス、ヨッヘン・マスといったビッグネームが集まった。日本からも、中村史郎(日産)や山内一典(グランツーリズモ)が参加している。
好みのカテゴリーや年代を見つけたら、ジャッジチームに付いてまわって、審査を見守るというのも、面白い見物方法だ。なんせ、ジャッジが来れば、参加者は必ず、ドア、フードを開け、エンジンを掛けたり、クラクションをならしたりする。普段は滅多に見ることのできないシーンを間近で目撃することができるのだった。 評価の基準はいろいろあるだろうけれど、まずは動くことが大前提となる。そのため、木曜には、持ち点アップを狙って、展示車両のパレードランが、カーメル市内~近郊で行われるほど。
そして、どれだけオリジナルモデルに忠実であるか、も大切な要素だ。装備品はもとより、ビスやナット、ホース類、コーションプレート、付属工具やマニュアルにまでチェックはおよぶ。いきおい、審査をうける方も神経質になりがちで、キレイなクルマをさらに磨きあげようとしたり。参加者があまり神経質になりすぎないようにと、こんなアナウンスが流れることも・・・。
「タイヤの溝に付いたままの芝生はマイナス点にはなりません」。
こだわりの凄さが分かっていただけただろうか。
主役はもちろん、フェアウェイの展示車両たち、なわけだが、他にも見どころはいっぱいだ。世界屈指の自動車イベントに成長したいま、名だたるラグジュアリィブランドがこれほど素晴らしい宣伝の機会を放っておくわけがない。ほぼすべての高級車メーカーやブランドが、最新モデルやコンセプトカーを展示する。なかには独自のブースを開いてしまうブランドまであって、年々、周辺の賑やかさは過熱する一方。メイン会場に行き着くまでが大変、だったりする。
もちろん、グッズやポスターといった自動車メモラビアを扱うショップもたくさん集っているし、公式イベントグッズ店や、アンティークグッズショップも見逃せない。さらには、ゴルフ好きなら大喜び間違いなしの、ペブルビーチグッズまで・・・。
毎年、ペブルビーチ見学は午前中だけにして、午後はふたたびラグナセカを目指すのだが、一度だけ、夕方までペブルビーチですごしたことがある。午後になると、各賞の発表がセンターステージで行われるのだが、その様子を、18番ホールに面したロッジ(中村さんと山内さんが宿泊する部屋にお誘いいただいた)のベランダから、シャンパン片手に見る、という贅沢な趣向だった。カタログの参加リストを見ながら、午前中にみたクルマを思い出し、各賞を予想し合う。これほど素晴らしい午後のひとときを、いまだかつて経験したことがない。けれども、ラグナセカのレースも見たい・・・。 
あの午後を経験して以来、後ろ髪引かれるどころか心が引き裂かれるような思いで、ペブルビーチの会場を後にしている。もう一日、よぶんにやってもらえないものだろうか・・・。否、この未達成感というか、見逃した感が、また来年に来ようという気分にさせるのかも知れない。
中村史郎さんが、良いことを仰った。「全てを見ようとするな。自分の好きなクルマだけ、じっくりと見てみなさい」。
その通りだと思う。
そして、また来年……。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。