出発は午後。だが、なんせ進行にうるさいF1レースのこと。ボクたち運転手は朝早くからクルマの脇でずっと待機、というわけだったが、好き者にとっては決勝当日のサーキットの中にいるというだけで、時間が経つのを忘れてしまう。ましてや周りには宝物のようなクルマばかり。なかなか味わえない“空間の妙”が、この日の朝のBパドックには、確かにあった。そして、見上げれば向こうに大観衆が…。
説明会が開かれた。そこで、今日の段取りと横に乗せるドライバーが発表される。ベンツユーザーといえば、元世界王者が三人!ハミルトンとバトンのマクラーレンコンビか、はたまた皇帝シューマッハか…。すみません、組み合わせが発表される前までは、その三人しか頭になかった。なんせ根っからの楽観主義者ですから…。じゃないと、スーパーカーなんて買えませんって。
それはさておき、いよいよ発表である。順次、ドライバー名が読み上げられていく。そのたびに、どよめきが起こる。マッサ、うぉおおお。ウェバー、うぉおお。フェテル、うぉおおおおお。カーティケアン、うぉ。
アロンソ、バトン、ハミルトンが大喝采で発表され、シューマッハと小林カムイでそれが頂点に達した。で、オレの相手は、いったい誰なんだ?
「メルセデスベンツ170Sの西川さ〜ん、エイドリアン・スーティルでお願いしま〜す」