見上げると、日本の国旗がはためいていた。ちょっと嬉しい気分になる。国旗と国歌をやみくもに否定する人には、外国の、言ってみればそうとうな片田舎に何十時間もかけてやってきて、ふと見上げたとき、そこに自国の国旗がひるがえっていることの何とも言えぬ心地よさを、いちど経験してみるといい。
さほど厳重ではないけれども、インターフォンで自己紹介する程度のセキュリティを通り抜けると、奥にゾンダが見えた。思わずカメラを取り出すと、通りがかったTシャツ短パンの青年に、身振り手振りで止められる。撮影禁止、らしい。後から聞いたところによると、その個体は760LH、つまりルイス・ハミルトン用で、今正に出荷するところだった。ちなみに、止めた件の青年は、パガーニの息子さん、である。
紫に輝く個体をじっくりと眺めて記憶にとどめたのち、小さなロビーに入った。中央にはわれわれを歓迎するかのように、ゾンダRがリアカウルを外して鎮座している。ウワサのパガーニデザイン・オーディオや、奥には創始者ホラチオが24歳のときに造り上げたF2マシンが展示されていた。