目を見張ったのは、シャシーやボディを仮置きするパイプ治具類の美しさと、宝石箱のように陳列された組み立て前パーツ類だ。これはもう、自動車工場の域を超えていると思う。クルマはもちろんのこと、治具や部品棚に目を奪われるだなんて・・・。そこには、ディテールにアートを求めてやまない、パガーニの姿勢が透けてみえた。やるなら徹底的に、というわけだ。
さらに奥にも、もう少し広いスペースがあった。ここで目につくのは、大小二機の、赤いオートクレーブだ。これは、カーボンファイバー強化樹脂(CFRP)を製造する釜で、特に高性能かつ表面仕上げのいいCFRPを作るためには必須の道具である。カーボンファイバーは、パガーニのエンジニアリングを根本から支える、言わば“命脈”でもあった。