1950年代のル・マン24時間レースは間違いなくジャガーの時代でした。フェラーリやメルセデスベンツ、アストンマーティンといった強豪を相手に5回の総合優勝を飾っています。白眉は55年からの三連覇。主役となったのがDタイプでした。
スポーツモデルのXK120シリーズがマーケットから好評をもって迎えられたことを受け、ジャガー会長で創業者のウィリアム・ライオンズはいっそうスポーツ色を強めようとル・マン参戦を決意します。XK120をベース、といいつつもシャシー構造をラダー式からマルチチューブラー式へと変更し、エンジンもパワーアップされ、より空力に優れたアルミニウムボディに換装されていました。正式車名はXK120-Cでしたが、のちにCタイプと呼ばれるようになります。
Cタイプは2度のル・マン優勝を遂げます。ジャガーは戦闘力を高めるライバルたちに対抗すべく、Cタイプをさらに発展させたDタイプを開発。1954年シーズンに間に合わせました。Dタイプには革新的なアルミモノコックボディが採用されており、この成功がのちの名車Eタイプを生むことになります。特徴的なテールフィンもつ空力スタイルは、Cタイプと同様、マルコム・セイヤーの手によるもの。ノーズ形状の違いなど、レーシングカーゆえに幾つかのスタイルがありました。
Dタイプの生産台数は75台。さらに25台のロードカー、XKSSも生産されました。ちなみにCタイプの生産台数は53台と言われています。
西川淳の、この個体ここに注目! |
生産台数わずかに75台。栄光に包まれたヒストリーを持つ老舗名門ブランドのレーシングカーがおいそれと市場に出回ることなどありません。仮にマーケットに放出されたとすれば、レーシングヒストリーのない個体でも軽く5億円は超え、ル・マンなどのヒストリー付きともなれば10億円以上になることも過去にはありました。街中でもし販売されていたとすれば間違いなくレプリカと言っていいでしょう。ちなみにメーカーもリクリエイションのDタイプを製作。そのお値段は2億円前後と言われています。
当然ながら、この個体も本物ではありません。非常によくできたレプリカです。それもそのはず車体(骨格)はフォーミュラーカー製造で有名なレイナード社によるマルチチューブラー式で、そこにEタイプ用のジャガー純正パワートレーンなどを組み込み、見事にダイナミックなスタイルを再現したFRP製ボディパネルがかぶさっています。
ちなみにその昔、レイナード製の骨格を持つDタイプレプリカをかつて自身も本物のDタイプでレースをした経験のある著名な元F1レーサーがテストドライブし、「これはオリジナルよりよく走る!」、と評した逸話もあるというほど、よくできたレプリカモデルです。
短時間でしたが試乗した感想もまさにその通り。古さを感じさせない剛性感あるシャシーにEタイプシリーズ1用4.2リットル直6は十二分のパフォーマンスで、愛知県の街中にいるにもかかわらずル・マン市の直線を走っているような気分になりました。
洒落の分かる人がよくできたレプリカで、本物以上の走りを思う存分に楽しむ。そんなクラシックカーライフも素敵だと思います。Dタイプのように本物を目にすることなどほとんどないと皆が知っているモデルなら、かえってそうではないですか?紛らわしくはないのですから。
僕がもしこの個体を買ったなら、すぐに色を塗り替えるでしょう。鮮やかなレッドか渋いチタングレーあたりが面白いと思います。
年式 | 1964年 |
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初年度 | 2021年9月 |
排気量 | 4,235cc |
走行距離 | |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 右 |
カラー | グリーン |
シャーシーNo | PIB52665BW |
エンジンNo | 7F6470-8 |
車検 | 2024年8月 |
出品地域 | 愛知県 |
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