オースチン・ヒーレーは1952年にBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)オースチン部門のレナード・ロードと自動車エンジニア兼デザイナーであったドナルド・ヒーリーとの間で20年間という契約で誕生したスポーツカーブランドです。
オースチン・ヒーレーは同グループのスポーツカーの中核を担うMGよりも排気量の大きな2ℓ超の上級クラス(その下のクラスはカニ目ことオースチン・ヒーレー・スプライト)を受け持ち、1950年代~60年代はアストンマーチン、ジャガー、トライアンフと並ぶ英国スポーツカーの代表車種の1台でした。テールドロップの美しいカーヴィースタイルは1952年の初代100系から1968年の最終型の3000MkⅢまで大きく変わることなく生産されました。
3000MkⅠは搭載する直6OHVエンジン(デビュー当初は直4もあり)の排気量が2.6ℓから3ℓに拡大された初のモデルです。ボディ寸法は全長、全高は初代ユーノス・ロードスターと同等、全幅に至っては150㎜も狭い。ラダーフレーム構造となりますが、車重は1tを軽く超える程度。これに3ℓエンジンを積み込んだわけですから、パワフルで、ドライバビリティに優れたスポーツカーであったといえます。
軽量かつトルクフルであるだけでなく、フロントブレーキに当時としては最先端のディスクブレーキを奢るなど、スポーツカーとしての基本性能もしっかりと備えていました。大排気量のゆとりある走行性能、走る、曲がる、停まる、のトータルバランスに優れ、それに加えて、ライバルよりもリーズナブルな価格設定は、手に入れやすいスポーツカーとして、主にアメリカ市場で幅広いユーザーから高い支持を得ることに成功しました。その後、1961年に3000MkⅡ(132ps)、1963年の3000MkⅢ(150ps)へとマイナーチェンジが施されるたびに、高性能化が推し進められ、走り好きの心を鷲掴みにし続けたオースチン・ヒーレーは1968年の生産終了までその人気は衰えることはありませんでした。
また、モータースポーツの活動も盛んで、メーカーワークスとして100系時代はル・マン24時間などのロードレースで、3000系時代になるとWRCなどラリーフィールドで、好成績を残しています。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
生産されたその大半が北米に輸出され、アメリカの恋人と呼ばれたオースチン・ヒーレー。今回紹介する1959年式はそのアメリカ市場の要望で誕生したBT7型と呼ばれる2+2仕様です。マーケットでは2シーターのほうが人気ですが、トノカバーを被せればスタイリングの印象ほぼ変わりませんし、実用性という点では後部座席があるメリットは計り知れません。オースチンヒーレークラブのメンバーが長きに渡り愛用されてきた個体で、定期的にメンテナンスされてきたことが細部の状態から伝わってきます。エンジン音に雑味はなく、ミッションも軽いタッチで変速できますし、ボディにも腐りや錆などは見受けられませんでした。ただし、フルレストア済のピカピカのコンディションではなく、これまでしっかりと走らせていた個体ならではの、いい意味で時代がかった部分も多数あります。新品を好まず、使い込んだものに美学を感じるような英国紳士風情を気取るには、最適な1台と言えるかもしれません。
ボディカラーは鮮やかながら落ち着きのあるヒーリーブルーとホワイトのコンビネーション。オープンカーらしい軽快感と華やかさもあり、抑揚のあるボディラインによく似合っています。塗装は飛び石傷を含めて小さな傷がある程度で、艶引けやヤレもなく、メッキ類もくすみも少なくこちらも良好だといえます。シンプルかつクラシカルな雰囲気の内装は使用感こそ感じますが、破れなどすぐに修理が必要な部分はありませんでした。必要最低限の装備しか備えていないヒーリーは、逆にいうと、壊れる部分が少ないクラシックカーでもあるということです。
ソフトトップは前オーナーがボディ色に合わせて新調したというおしゃれなネイビーブルーで、閉めた状態でもオープンカーの華やかさを際立たせてくれることでしょう。取り外し式のサイドウィンドウやトノカバーの状態も良く、今すぐ大掛かりに手を入れなければならない部分がないため、即クラシックカーイベントへ参加することも可能でしょう。走らせながら、徐々に手を加えて付き合いを深めていく。そんなスタイルで楽しめる1台だと思います。このオースチン・ヒーレーを手に入れて一番苦労するのはメンテナスではなく、この車の華やかさに負けないための自分磨きかもしれません。
年式 | 1959年 |
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初年度 | 1999年3月 |
排気量 | 2,912cc |
走行距離 | 74,000km |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | ブルー |
シャーシーNo | HBT7L-1253 |
エンジンNo | |
車検 | 2021年1月 |
出品地域 | 大阪府 |
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