鬼才アレック・イシゴニス博士を中心としたBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)の設計チームにより1台の小さな2ボックスカーが誕生します。
ADO15という開発コードを持ったこの車は、これまでのBMCの代表的小型サルーン、オースティンA35とモーリス・マイナーのような丸みを帯びたスタイリングとは、一線を画したスクエアなデザイン。さらには、フロントに配置した横置きにしたエンジンの下部にミッションを組み合わせるといった、これまでの英国車では一般的でなかった前輪駆動方式を採用するといった画期的なものでした。
そうした恩恵を得て、全長わずか3メートル5センチしかないADO15は、その小さなスタイルそのままに「ミニ」というネーミングを与えられ、BMCの持つオースティンとモーリス、2つのブランドで1959年8月に小型大衆車のマーケットへと登場します。
所得の少ない購買層をターゲットにした価格設定ながらも、保守的な考えの購買層は同じ年にデビューしたライバル、フォード・アングリア105Eの古典的なスタイルを支持し、発売当初のセールスはイマイチだったそうですが、富裕層がレジャーなどに使うセカンドカーとして人気が高まります。ビートルズの4人も、思い思いにカスタムしたミニを楽しんでいましたね。
また、その剛性が高く軽量のボディ、ラックアンドピニオンの操舵方式による優れたハンドリングに、モータースポーツを楽しんでいたユーザーが注目します。 翌1960年のグッドウッドでの英国サルーンカー・チャンピオンシップに初登場するや3位に入賞。英国サルーンカー・チャンピオンシップの1000cc以下のクラスは徐々に850ccのミニが占めることになります。
1959年、1960年の2度、F-1ワールド・チャンピオンを獲得するなど、フォーミュラーカーレースで活躍していたクーパー・カー・カンパニーとBMCが手を結び、997ccのミニ・クーパーが誕生することにより、ミニはモータースポーツで、さらなる飛躍をする事となるのです。
1963年には1071ccのクーパーSが登場し、1275ccのクーパーSや970ccのクーパーSといった、それぞれの排気量で優位に立てるものをラインナップしていくことになるのです。
特別なブロックにEN40B鋼に窒化処理を施したクランクシャフト、ロッカーアームもノーマルのプレスから鍛造されたものへ変更。ビッグバルブ化され、バルブガイドも白銅と変更し、オイルクーラーを増設。現在のエボリューションモデルの先駆けともいえるメニューを施したモデルが追加されていくのです。
そしてミニ・クーパーは、ラリー・フィールドで大活躍を見せます。 モンテカルロ・ラリーの事実上の総合4連覇(1964年、1965年、1967年の総合優勝、1966年は総合1位でのフィニッシュながら、灯火違反という判断で全ての英国車が失格)、1000湖ラリーでは1965年から1967年にハットトリックを達成します。 もちろん、サーキットでもワークスチームのクーパー・カー・カンパニー、ブロード・スピード、ドン・ムーアといったチームが国内外の様々なレース、クラスでタイトルを重ねます。
他メーカーの新型車両投入による次の時代となってからも、1970年台末までミニはほとんど姿を変えないまま、ツーリングカーレースの雄であり続けたのです。 メーカーとしてのモータースポーツへの挑戦以降も、世界中で行われているミニによるワンメイクレースや草レース、1960年前後のマシンによるヒストリックカーレースでも活躍し、ミニは輝きを失いませんでした。
今回ご紹介するミニ・クーパーは、写真からも一目瞭然ですが、レーシングスタイルにモデファイされています。
1980年中期からSCCJ(スポーツカークラブ・ジャパン)によるヒストリックカーレースや、タックス(現JCCA)など、盛んになってきた我が国のヒストリックカーレース。
それらのレースのメインコースである筑波サーキットのグランドスタンドは、観戦者で埋め尽くされるくらい盛り上がっていた時代、主役格ともいえる活躍を見せていたのがミニ・クーパーでした。
わずか1300ccの排気量で、排気量の勝るライバルたちと互角以上に渡り合えるポテンシャルは、現役当時と変わらずジャイアント・キラーそのもの、弁慶を成敗する牛若丸のような姿は、きっと日本人の好みなのでしょう。
そうしたサーキットのパドックで、エンジンのフードを開けると、その魔法のように速いマシンのエンジンを一目見ようと、常に黒山の人だかりだったのが、今回ご紹介する「ナリタ・ミニ」です。
当時、ヒストリックカーレースに積極的に参加していた「ナリタガレージ」。 “白い稲妻”と呼ばれた「ナリタ・ミニ」は最もチューニング度合いの高いクラスで、常勝ともいえる快進撃を見せておりました。
代表の成田佳己さんによる、オリジナルのアイテムは、シフトノブや、金属製ウインドウキャッチ、etcといったアクセサリー的なものから、マフラー、ロールケージ、アルミラジアスアームや、スタビライザー、4ポッドブレーキキャリパー、ストレートカット、クロスミッションから、5速ドグミッション、シーケンシャルミッション、といった本格的なレーシングパーツまで多岐に渡り開発製造されており、それらは現在でもミニマニア垂涎のアイテムとなっております。
また、1992年の英国で行われたミニ世界一決定戦後には、上位入賞のマシンを、優勝ドライバーのビル・ソリスがインプレッションするというMINI WORLD誌の企画にも選抜され、ドライバーとして、1番を選ぶならこのマシンだと評価したのが、ナリタ・ミニだったのです。当時、ナリタ・ワークスとして走らせていた、2台のミニ。成田氏も開発に関わったKADツインカム16バルブヘッドを搭載した前出のマシンと、カテゴリーの違うクラスへ出場していたエンジン以外は全く同じ手法で製作されているのが、このミニ・クーパー。
スムージングされたボディは、当時のレーシングミニの定石。ナリタオリジナルのサブフレームにサスペンションシステムはロアアームやアッパーサポートも変更されてほかにない安定感が体感できます。黄金期のモーターレーシングヒストリーと歩んできたミニ・クーパーに加え、我が国でミニが最も熱く盛んだった時代、伝説のチューナーが心血を注いだミニ・クーパーなのです。
奥村純一の、この個体ここに注目! |
2016年にエンジンレスの状態で購入したオーナーさんは、この伝説のミニを完成させるべく、自身が所有していたクーパーSのエンジンを使用したという。セーフティファーストのチューニングヘッドや、メーカー純正のCパーツをふんだんに使用してエンジンを完成させたという。 使用したのは当時ものと呼ばれるレアパーツだ。それだけでもすでに入手困難で、ネットオークションに出てくればあれよあれよと信じられない価格になるものばかり。
オーナーさんの厚意により、少しドライブをさせていただいた。 変則のHパターンで、セカンドを間違えないように注意しながらシフト操作する。この時代の小排気量チューニングエンジンによくある、特有のか細さはない。全域トルクフルで、すっと回転を上げていく。非常にストロークの短いドグミッションの小気味好いシフトチェンジは喜びを感じさせてくれるのと、カム&ポールのリミテッドスリップデフによるキックバックと、ストレートカットのギアノイズが、このクルマの素性を一番に感じる部分だろうか。
また、レーシングに限らず、硬いという印象をもつことが多いミニとは全く違う乗り心地にも気づく。ラバーコーンは廃された前後のサスペンションは、F1用のコニF-1用のダンパーを使用したコイルオーバー式。ブラケットも高い位置へと変更されており、ストロークは少ないもの、その容量でマイルドに感じるのだろう。 また1960年代らしくマイルドスチールのメガホンマフラーから奏でる排気音も心地よい。
昨今のクラシックカー人気により、オリジナル状態のミニ・クーパーも700万円を下回る個体も少ない。これだけのレアパーツ、メニュー、そして燦然と輝く伝説を手にいれることができることを考えると、相当のバーゲンプライスだと思う。 今回の出展はオーナーさんが転職することになり、惜譲するということです。
1275クーパーSエンジン
プラス20オーバーサイズピストン使用
1293cc
圧縮比11.5:1
セーフティファーストのチューニングヘッド
純正Cパーツ95度レース用カムシャフト
ローラーロッカー
オイル穴ありライトウェイトリフター
バーニアタイプカムスプロケ
スプリットウエーバーDCOE40
MOCALオイルクーラー
アルドン製イグナイター、フルトラ
アルミラジエーター
スパル電動ファン
ナリタ製5速ドグミッション
ストレートカットドロップギア
カム&ポールレース用LSD
3.7:1ストレートカットファイナル
ナリタ製インマニ
マニフローLCBステージ2
ナリタ製メガホンマフラー
ナリタ製スロットルリンケージ
ATL安全タンク20リッター
KONI F-1用コイルオーバーサス
ナリタ製アルミラジアスアーム
ナリタ製10インチ4ポットキャリパー
ナリタ製前後スタビライザー
ナリタ製アルフィンドラム
レスレストンバケットシート
BRITAXシートベルト
ナリタ製9点式アルミロールケージ
年式 | 1963年 |
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初年度 | 1987年11月 |
排気量 | 1,293cc |
走行距離 | 15,819km |
ミッション | 5MT |
ハンドル | 右 |
カラー | シルバー |
シャーシーNo | KA2S4488682 |
エンジンNo | |
車検 | 2024年4月 |
出品地域 | 群馬県 |
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