艶やかなカラーで主張する 「英国の走る芸術品」

英国のアイコニックなラグジュアリースポーツメーカーであり、独伊のスポーツモデルとは一線を画する趣味性の高いモデルを数多くリリースし続ける「アストンマーティン」。DB9はブランドの中核をなす車種(発売当時は上にはヴァンキッシュ、下にはヴァンテージが用意されていました)で、2004年のデビューに合わせて操業を開始した英国のゲイドン工場で生産された初めてのアストンマーティンです。

アルミのモジュール構造を用いた新たなVHプラットホームは、ホイールベースの調整が容易で多品種の生産に対応できること、フレームの完全アルミ化により軽量が進められること、などがそのメリットでした。

先代のDB7よりもロー&ワイドが強調されたDB9の薄く流麗なスタイリングは、その実、全長4710㎜、全幅1875㎜とかなり大柄です。ボンネット下に収まっているのが5.9リッターV型12気筒DOHCエンジンであるにも関わらず、車重が1800㎏以下に収まったのは間違いなく、VHプラットホームの恩恵でしょう。

新工場に変わったことで、クオリティ、生産効率などは高まりましたが、内外装を含めてハンドメイドで製作される部分も依然多く、手間暇かけて組み立てていく姿勢は昔と変わりありません。ファッション系出身のデザイナーが手掛けた新たなデザイン演出と英国クラフトマンシップが息づく厳選のマテリアルと丁寧な作り込み。それらが融合したインテリアは、凛とした佇まいのなかにも華やかさと色気がほどよく漂うプレミアムな空間に仕立てられました。

DB9はデビューの2003年から生産中止となった2016年までの13年間で、一部改良を含む6度の変更を受けています。450psであったエンジンは最終型では547psまで高められ、2012年にはボディパネルの70%を刷新。モデル後半にはカーボンブレーキが投入されるなど、前期と後期では別物と言っていいほど性能向上と熟成が進みました。とはいえ、アストンマーティン最大の魅力は芸術品のような内外装でしょうし、初期型だからといってパフォーマンスに不満を持つ必要はありません。

DB9は5.9リッターV12が生み出すパフォーマンスをスポーツ性能に向けるのではなく、コンフォート性能の一つである余裕ある走りに活かしたグランドツアラー的な使い方が最も似合うスーパースポーツだといえます。デビューしてからすでに15年以上が経過していますが、内外装のデザイン、パフォーマンスを含めてその魅力は今なお色褪せることはありません。


山崎真一の、この個体ここに注目!

車体番号と登録年月日を見ると、最初の一部改良が行われる直前にラインオフされたモデルです。走行距離は11年経過で4.1万㎞とこの手のスポーツモデルとしては距離が伸びている部類でしょう。エクステリアカラーはクアンタムシルバーで、YOKOHAMAのAVS MODEL F15のホイールが装着されている以外、ノーマルを保っています。塗装の状態は年式相応といったところで、細かい傷や擦れは多少見受けられますが、磨きやコーティングなどで一皮むけば新車のような輝きが復活するはず。

現オーナーが購入時にこだわったのが、左ハンドルとツートーンの本革シート。英国生まれのアストンマーティンは当然右ハンドルがオリジナルですが、輸入車を選ぶオーナーには、あえて左ハンドルを指名される方が今も一定層いらっしゃる。特にプレミアムモデルになればなるほどその傾向は未だに強くなるようです。本革シートはボルドーとアイボリーのコンビネーション。艶麗さを感じさせる色使いは、華美過ぎないインテリアが好まれる英国車の中ではかなり稀な組み合わせで、特にルーフライニング全体を覆うボルドーのアルカンターラが、室内をよりエキゾチックで妖麗な雰囲気に仕立てています。運転席側のサイドサポート部にやや汚れが目立ち、座面にも若干使用感が見られますが、クッションなどのヘタリは少なく、定期的なメンテナンス以外は手を入れる必要はなさそうです。

スターターキーを押すと轟音とともに目覚める5.9リッターV12エンジンはアイドリングも安定しており、マフラーからは大排気量ならではの力強さも感じました。走りだすと独特のエンジンのうなり音とV型特有の低く響く重厚なサウンドは、走り去る姿まで印象に残すほど素晴らしく、一度聴くと虜になってしまうことでしょう。

喜ばしいことに、現在DB9の中古車相場は同年代のライバル車と比べてかなり割安に推移しています。特に初期モデルの多くは新車価格の3分の1以下=国産高級ミニバンの新車を購入する予算で、自動車趣味として敷居の高いアストンマーティン、しかも憧れのV12エンジン搭載車が手に入るのです。これは、かなり魅力的ではないでしょうか?

今回の個体のように、ユニークなコーディネーションのインテリアを新車で選ぶのは勇気が必要ですが、こなれた価格の中古車ならハードルも随分と低くなるでしょう。こうしたところも中古車選びの醍醐味のひとつではないでしょうか?

車両スペック

年式2008
初年度20082
排気量5,935cc
走行距離41,403km
ミッション6AT
ハンドル
カラークアンタムシルバー
シャーシーNoSCFAD01AJ8GA09982
エンジンNo
車検20214
出品地域愛知県
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
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