今こそ乗るべき、ツウ好みの渋色の渋馬

1950年代の後半のこと。創始者エンツォの愛息子アルフレッドが病で急逝すると、エンツォはその死を悼み、アルフレッドが生前に関わっていたプロジェクトの成果=F2レース用V6エンジンを“ディーノユニット”と呼ぶようになりました。ディーノとはアルフレッドの愛称で、“〜ノ”はイタリア語で“小さいもの”や“可愛らしいもの”によく使う語尾変化です。

1960年代になると、エンツォ はV6エンジンをミドに積んだ2シータースポーツカーの開発を決断。ピニンファリーナデザインのふくよかなスタイルを持つフェラーリの“量産モデル”はその名もディーノ206gtと名付けられ、マイナーチェンジ版(といっても大幅に違うのですが)の246gtと共に、跳ね馬エンブレムを一切まとわないフェラーリの歴史的なサブブランドモデルとなったのです。

エンツォが12気筒以外の市販ロードカーにフェラーリと名付けることをためらったため、ディーノとネーミングされたという話はあまりにも有名でしょう。もちろんそれは今でいうところのブランドマーケティングの一環だったのかもしれません。けれどもむしろエンツォが若くして亡くなった愛息子の名前をカタチ(=エンブレム)として残したいという思いの方が強かったから、ではないでしょうか。事実、彼の名は今なお人気モデルの名前として語り継がれています。

大人気を博したディーノ246gtの生産が73年に終わると、後継モデルとして登場したのがディーノ308gt4でした。マラネッロ史上初となるV8ミドシップの市販ロードカー。車名末の4は4シーターを表しています。当時の高級スポーツカーマーケットを見渡せばポルシェ911が人気で、マラネッロもそれにあやかり、ミドシップながら911と同じ2+2モデルを導入したというわけでした。

オリジナルデザインはフェラーリにしては珍しくベルトーネ社によるもので、当時のチーフデザイナーはかのマルチェロ・ガンディーニ。当時のフェラーリ車はピニンファリーナデザインのみで、ベルトーネのやや直線基調のデザインはフェラーリ好きにかなりの衝撃を与えたようです。ボディサイドの潔いキャラクターラインより下側の膨らんだ造形などは同時代のガンディーニ作品であるランボルギーニカウンタックや同ウラッコ、ランチアストラトスなどとよく似ています。真横から見るとルーフラインが後端に向かって上がっているのが特徴といえるでしょう。

ミドに横置きされたのは3リッターV8エンジンで5速MTと組み合わされました。このパワートレーンはのちに2シーターモデルの308GTBなどにも搭載されることになります。またイタリア市場の税制を考慮して2リッターモデルの208gt4も生産されました。

2+2ながら2シーターの308GTBよりもワイドトラック・ロングホイールベースでミニサーキットなどでのパフォーマンスは時に2シーターモデルより優れていたと言われています。

76年にディーノブランドは廃されてついにフェラーリ308gt4と名乗ることとなり、1980年まで製造されました。


西川淳の、この個体ここに注目!

1981年登録、正規ディーラー車(輸入元コーンズ)、1オーナーのフェラーリ308gt4です。なんとも絶妙な色合いのガングレーメタリックは、最近流行りの“渋色フェラーリ”としても絶好のチョイスでしょう。

前オーナーは海外生活が中心だったということでほとんど乗ることはなく、この個体も基本的にはずっと日本のガレージに仕舞われていました。それゆえ、ノーレストレーションの実走行距離2万キロ。その昔は跳ね馬のなかでも中古車相場の安かったモデルで4シーターの便利さと相まって乗りっぱなしにされる個体の多かったgt4としては、奇跡のコンディションだといえるでしょう。ゴム類やガラスの状態を見れば、良い個体であることは明らかです。

もっとも40年以上が経っています。あまり乗られていなかったとはいえ、ボディにはペイントの球状浮きやエクボ、タッチペイント跡など経年劣化が散見されます。またブラックのシートはホールド感もしっかりあってこのまま十分に使えますが、ところどころに剥げや傷があり、早めの手当が無難でしょう。

撮影場所への移動に少し試乗しましたが、ボディと足回りのしっかり感は上々で、308gt4の美点であるハンドリングを存分に楽しめそうです。V8エンジンはアイドリングが高めで調整が必要になりますが、大きな問題ではないでしょう。走り出せば快調に吹け上がり、当時の跳ね馬に独特なサウンド、エグゾーストノートとキーンというメカニカルノイズの合奏を大いに楽しめました。

内外装の適度なやれ感をそのまま1オーナー気分で楽しむもよし、軽いレストレーションでお化粧直しして乗るもよし、流行りの渋色フェラーリとして長く付き合えそうな一台です。

車両スペック

年式1980
初年度19819
排気量2,926cc
走行距離20,000km
ミッション5MT
ハンドル
カラーガンメタリック
シャーシーNo
エンジンNo
車検なし
出品地域静岡県
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
  • 車両の状態を専門的にチェックしているわけではありませんので、何らかの不具合や故障が含まれる場合があります。また取材から日にちが経過することによる状態変化もあり得ます。掲載情報はあくまでも参考情報であることをご理解いただき、購入に際してはご自身の車両状態チェックとご判断を優先ください。
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