1950年代に輝かしいレース戦績と数々の国際記録を樹立した名匠カルロ・アバルトが、自身の誕生月星座をエンブレムに落とし込んだ “スコルピオーネ”。いまや誰もがその存在を知る老舗ブランドが、初めての自社量産GTとして生み出したのが、「アバルト750GTザガート」でした。
アバルト社は1949年にイタリア・ミラノで創業した当時、フィアットのチューニングパーツを製造販売するチューナーでした。その一方でアバルト氏自らが手掛けたコンプリートカーはレースシーンで着実に結果を残し、1955年にはフィアットの新型ベーシックモデル600(セイチェント)をベースに仕立てた「フィアットアバルト750GTザガートデリヴァツィオーネ」を製作。エンジン排気量を633ccから747ccまで拡大し、最高出力を18hpから40hpまで引き上げられたチューニングコンプリートは、たちまちレースフィールドを席巻しました。鳴り物入りのポテンシャルをアバルト氏はさらに量産GTとして開発したところ、世界中にファンが増殖。こうして誕生した「アバルト750GTザガート」は、ミッレ・ミリアやイタリア選手権などで多くのコンペティターたちが栄光の記録を積み上げたのでした。
特徴的なルーフ形状の通称“ダブルバブル”は、ドライバーのヘッドクリアランスを稼ぐために1956年秋のトリノショー以降から製作されたシリーズ2より採用。開発当初は通常のルーフ形状でした。このダブルバブルはシリーズ2を経て、1957年には空力も追求されながらリアエンドにかけてテールフィン形状に美しくまとめられたシリーズ3へと洗練されました。
どことなく愛嬌がありスタイリッシュなボディは、カロッツェリア・ザガートの手によるもの。アルミ材の採用により車両重量は535kgという軽さで、わずか747ccのエンジンながら160km/hの最高速度と俊敏なフットワークを兼ね備えるハイパフォーマンスGTとして今も多くのマニアに愛され続けています。生産台数は400台程度と言われていますが、オリジナルのコンディションを保っている個体は世界でも僅かしかありません。
桑野将二郎の、この個体ここに注目! |
淡いイエローの小さなボディには、歴代オーナーの愛がいっぱい詰まっているような印象のオリジナル性が高い個体です。
現オーナーはダブルバブルのスタイリングに惚れ込んで、アバルトを複数台保有するマニアから譲ってもらい2011年から所有。ベッキオ・バンビーノなどクラシックカーラリーにも出走・完走を記録しており、信頼性の高さは折り紙付きです。 エンジンはヘッドのオーバーホールや点火系のリファインを中心にメンテナンスされ、冷却系はコア増しラジエターを積むなど時代に合わせたアップデートも。またアバルトの代名詞であるエキゾースト系は、マニホールドがオリジナルのまま、リアマフラーは生産中止の欠品であるためレプリカに交換されています。排圧もしっかり保たれており、マニア垂涎の“レコルドモンツァ”サウンドはしっかり生かされています。
ボディは全体的に鋼板の劣化も少なく、付随するラバー類は交換済みです。整備工場への預け入れ時に増えてしまったというドアパネル下部の錆は、現オーナーがこれから鈑金補修を施して、綺麗な状態に仕上げてから次オーナーへバトンを繋いでくださるとのことです。また、カンパニョーロのホイールもコンディション良好ですし、パーツナンバーのマッチングが確認されている希少な純正メッキオーバーライダーも保管されています。
インテリアは、世界で6本しか作られていないという幻のフランココンティ製アバルト用レザーステアリングに驚かされました。これだけでも70〜80万円程度の価値があるでしょう。なお、ノーマルのステアリングも保管されていますので、次オーナーにそのまま譲ってくださるそうです。そしてダッシュボードやシートも美しい状態を保っており、シフトノブやスイッチ類も丁寧に使われていたことが窺えます。
絶妙にアップデートされながらオリジナルの良さを失っていない貴重なアバルト750GTザガートですが、現オーナーは保有台数が多いため、これからクラシックカーラリーで走りたいというようなクルマ好きの方にお譲りしたいということです。取材当日は大変暑い日でしたが、エンジンは一発始動でアイドリングも安定しており、ロケ地までの15分ほどのドライブも快調で運転が楽しそうでした。動態保存でクルマを愛せる方に、是非乗ってみて欲しい1台です。
年式 | 1958年 |
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初年度 | |
排気量 | 747cc |
走行距離 | |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | イエロー |
シャーシーNo | 544892 |
エンジンNo | 1371778 |
車検 | |
出品地域 | 和歌山県 |
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