コルベットの4代目となるC4型は「国際的に通用する本格派スポーツカー」をコンセプトとして、初めて世界と対峙するために誕生したモデルでした。開発過程ではミッドシップも検討されましたが、最終的には従来と同じコンベンショナルなFRモデルが選択されています。ただし、3代目C3型の抑揚のある大胆なスタイリングは影を潜め、ロングノース・ショートデッキのスッキリしたヨーロピアンテイスト溢れるデザインに一新されました。空力性能はCd値0.44から0.34に改善しています。フレーム構造は旧式のラダーフレームから最新の角断面鋼管構造となり、軽量化とボディ剛性向上を両立。さらにホイールベースを短縮するとともにトレッドは拡大され、重量配分も49:51と理想に近づけるなど、C3型とは真逆といえるリアルスポーツカーのあるべき理想の姿を追求しています。発売当初から強化サスペンションパッケージ(Z51、Z52、Z07)をオプション設定したことや、インパネに航空機を彷彿させるエレクトロニック・ディスプレイを採用したことは、開発陣の新時代スポーツカーへの意気込みの表れだったのかもしれません。
もちろん、歴代の不文律に従ったイヤーモデル制を踏襲し、1984年のデビューから1996年の生産終了まで、進化の手を緩めることはありませんでした。エンジンは5.7リットルV型8気筒OHVの排気量と型式は変わることはありませんでしたが、初期の205㎰(L83型)から330㎰(LT4型)まで徐々に引き上げられています。見た目はほぼ変化はないのですが、パフォーマンスは年式で大きく異なるので、購入時は注意が必要です。ミッションは4速ATが標準で、MTはデビュー当時は4速MT+オーバードライブでしたが、89年には新設計のZF製の6速MTを投入。スポーツ性のアップはもちろんですが、巡航速度のエンジン回転数を下げることができ、低燃費にも貢献しています。1986年にはクーペに加えて、10年間のブランクを経てコンバーチブルが復活し、バリエーションを拡大しました。
また、スポーツ度を高めたC4コルベットを語るうえで欠かせない存在が、90年に登場したハイパフォーマンスモデルのZR-1です。最大の特徴は当時GMの傘下にあったロータスが開発を手掛けたコルベット史上唯一のDOHCエンジンの搭載です(クーペのみ、コンバーチブルには設定なし)。排気量は同じ5.7リットルながら、スタンダードモデルの240㎰に対して初期モデルで375㎰、93年以降の後期モデルでは405㎰(スタンダードは300㎰)と唯一見劣りしていたスペックでもライバルと肩を並べました。このZR-1の投入でコルベットは名実ともに世界のスポーツカーの仲間入りを果たすことになるのです。
排ガス規制で牙を抜かれたパフォーマンスを蘇らせ、ル・マン24時間レースに参戦するなど、世界のスポーツカーとの真っ向勝負を挑んだ4代目コルベット。現在のC8へと続く基礎を作ったのは間違いなくC4であると言えるでしょう。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
目の前にあるC4型は最終年式となる1996年式のはずですが、まるで過去からタイムスリップして来たのではないか、と思えるほど新車同然のコンディションで、オドメーターが示す走行距離もわずか8,871km。現オーナーから「とあるコレクターから譲り受けた」と聞いて、この奇跡の個体が存在する理由が素直に頷けました。
ガレージに保管されていたこともあり、色抜けしやすい赤のボディカラーは鮮やかさと艶やかさは全く失われていません。ボディは光を当てると磨き傷が多少見えますが、目立った傷は助手席側バンパーに飛び石跡が1か所、運転席ドアのモールに開閉時にぶつけたであろう小さな塗装剥げが見られる程度でした。劣化が見られたのは樹脂のフロントリップの中央部。表面は艶が落ちて白っぽく、表面には細かい傷が無数にありましたが、場所が場所だけに仕方がないところでしょう。グルっと車体を一周して見つけたのは純正アルミホイールリムのこすれ傷。運転席前輪と助手席側前後輪にありましたが、いずれも軽度。いずれもリペアで十分修復可能なレベルです。
コレクションとして保管されていましたから、走る機会は少なかったそうですが、定期点検&車検は欠かさずヤナセで行われており、常に完璧な状態でオーナーを迎えられるようスタンバイされていたそうです。ただし、タイヤは使用期限を過ぎているのか、若干硬化ぎみ。山は十分残っていますが、コルベット本来の走りを楽しみたいなら交換しておきたいところです。インテリアはレーダー探知機が取り付けられている以外はフル・オリジナルです。劣化しやすいプラスチック類も使用感がなく、内装も思わずため息が漏れてしまうほどの素晴らしい状態。シートは運転席外側のサポート部分にシワや色の変化が若干見られるものの、ヘタリもなく、包み込まれる感覚も十分残されていました。また、オープンモデルでは必ず確認しておきたい幌の開閉も操作時にひっかかりもなくスムーズ。ソフトトップの程度も良好で、文句なしの5つ星レベルでした。
唯一、ヘッドライトの点灯&格納に数秒間モーターがガタガタと回り続ける症状が出ていましたが、これはヘッドライトモーターブッシュが劣化で砕けていることが原因。数千円の部品で解決しますので、安心していただければと思います。
1995年式以降のモデルはブレーキが大径化され、新世代のLT1エンジンもパフォーマンスだけでなく熟成が進み、レスポンス/始動性/燃費も高められるなど、その完成度は誰もが認めるところです。これ以降のモデルでは調律され、味わうことができなくなった中速域での圧倒的な加速感を楽しめるのもC4型コルベットの魅力の一つ。最終型の極上車。探している方ならばどうぞこの機会を見逃さないでください。
年式 | 1996年 |
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初年度 | 1996年8月 |
排気量 | 5,727cc |
走行距離 | 8,871km |
ミッション | 4AT |
ハンドル | 左 |
カラー | 赤 |
シャーシーNo | CY1-1166-Y |
エンジンNo | |
車検 | 車検2年付き |
出品地域 | 大阪府 |
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