TVRというスポーツカー・メーカーは、1947年にトレヴァー・ウィルキンソンが興して以来、何度か経営者が変わりはしたものの、現在も存在しています。が、2004年に当時24歳だったニコライ・スモレンスキーというロシアの実業家が買収してめちゃくちゃにしてしまって以来、希望に溢れる輝かしい話は全く耳にしません。
2013年に所有権がレス・エドガーとジョン・チェシーの手に渡ってからは健全な経営とユーザーへの正しいサービスを目指して動きはじめ、2017年にはかのゴードン・マレー設計によるニューモデルを発表したりもしましたが、計画ではとうにデリバリーがはじまる時期が来ても生産すらスタートしておらず、なかなか前途多難の状況にあるようです。
そうしたTVRの歴史の中で最も色彩が豊かだったのは、3代目の経営者だったピーター・ウィラーの時代だったといえるでしょう。1981年にマーティン・リリーから経営権を譲り受けたウィラーは、創業の頃からの“スポーツカーは大きなパワーを持ち軽量であるべし”というような思想をそのまま活かしつつ、次々と新しいモデルをリリースしました。ウィラーの基本的な考えは、“英国人が英国人のために作る英国製スポーツカー”。伝統的なものだけでなくその実は新しいものにも同じように関心が高い英国人の好みを見事に反映したTVRのスポーツカー達は、ひと頃は英国内の販売台数でポルシェを上回るほどの人気を博したほど。
その大きな原動力のひとつになったのが、ここに紹介するグリフィスです。1963年から1965年にかけて作られた初代グリフィスはクローズドのクーペでしたが、1992年から2001年に生産されたこの第2世代は、ルーフパネルを取り外してタルガトップにもなればTバーの部分を収納して完全なオープンカーとしても機能する新しい魅力をも備えていました。
ロングノーズにショートデッキの古典的なスポーツカーとしてのシルエット。そのスタイリングデザインは絶妙な何種類もの曲面をシームレスに繋げていったかのような、クラシカルにも思えるし斬新にも感じられる魅力的なものでした。基本構造は、もちろんTVRの伝統ともいえるマルチチューブラーフレームにFRPボディを被せる方式で、フロントにローバー製V8ユニットをチューンナップして搭載しています。
今回のグリフィス500は、第2世代の最後期といえる2000年式のグリフィス500。V8ユニットは320psを発揮しています。それが車重1060kgというマツダ・ロードスター並みの車体に搭載されているのだから、そのパフォーマンスがどれほどのものかは想像できるでしょう。その加速は素晴らしく強烈で、慣れない人を隣に乗せたら驚きで声もあげられないか声をあげちゃうか、間違いなくどちらかでしょう。
この時代のTVRは、当然のようにABSやトラクションコントロールのようなセーフティデバイスを何ひとつとして備えていませんでしたから、その走りは全てドライバー自身がコントロールしなければなりません。コーナーでの操縦性はなかなかのものでしたが、アクセルを踏みすぎると一気にテールが持っていかれるような過激なところもあり、蛮勇な心構えとウデがなければ100%乗りこなすことのできないキャラクターが最高に魅力的だったのでした。
嶋田 智之の、この個体ここに注目! |
新車時からのワンオーナーで、取材時の走行はわずか1万7880km。当時の正規輸入元だったTVRジャパンが輸入したこのグリフィス500は、抜群のコンディションを保っていました。
現オーナーが手に入れたときからガレージで保管されていることもあって、クラシックグリーンパールにペイントされたボディに荒れたところもくすんだところもないし、ヘッドランプのプレキシグラスに曇りもなく、幌の後部の透明なビニールにはほんの僅かな曇りはあるけど綺麗な状態、ホイールにもガリ傷のようなものは見当たりません。
インテリアもシート、内張り、センタートンネルのレザーに傷らしい傷はなく、ダッシュのウッドパネルにも割れはありません。
低いポールが見えなくて軽くプッシュしてしまったというノーズの小さな傷とほんの幾つかの跳ね石による傷、目を皿のようにして探し当てたコンソール部のウッドに入る短い1本の筋以外、マイナス点をつけるべきところは皆無、といっていいほどです。
見てのとおりフルオリジナルですが、当時オプションだったロールバーとスポーツサスペンションが備わっていて、現在は車検のために車高を上げた状態。タイヤはアドバンA052が、ほぼフルに山が残った状態です。
オープンカーゆえ心配な雨漏りは、シーリングで対策済み。消耗部品のリフレッシュも含め、TVRに強いメカニックさんと相談しながらマメにメンテナンスを繰り返してきていることもありますが、トラブルらしいトラブルには遭ったことがないそうです。
これほど状態のいいグリフィスは、もしかしたら二度と出てくることはないかも知れません。そもそも市場に出てくることの少ないグリフィスですが、欲しいと願っている人はこれを見逃したらいけない、とすら感じています。
年式 | 2000年 |
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初年度 | 2000年 |
排気量 | 4,988cc |
走行距離 | 17,880km |
ミッション | 5MT |
ハンドル | 右 |
カラー | クラシックグリーンパール |
シャーシーNo | SDLAA04R5YB001219 |
エンジンNo | |
車検 | 2021年7月 |
出品地域 | 東京都 |
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