毎日乗りたくなる、日本一パゴダ

名車300SLガルウィングにおいて、メルセデスベンツは初めて“SL”の名前を使い始めました。その意味するところは、“スポーツ&ライト”。つまり軽くて速いスポーツ&GTカーです。

50年代半ばから60年代初頭にかけて、初代というべき300SLガルウィングと、その後継モデルである300SLロードスター、さらには廉価版の190SLが生産されていましたが、アメリカのスポーツカー市場が勃興するに伴って、その中間を埋めるようなスポーツモデルを望む声が高まった結果、1963年にW113の型式名を持つ新世代のスポーツモデルが230SLとしてデビューを果たします。

230SLはボッシュ製の機械式マルチポイントフューエルインジェクションを備えた直6エンジンを積むロードスターです。取り外し可能なハードトップを備えており、その独特な形状から“パゴダルーフ”と呼ばれるようになりました。それゆえクルマ好きが“ベンツのパゴダ”というときには、このW113を指すことになります。

インテリアに300SLとの共通イメージを色こく残した230SLは、67年に250SLへとバトンタッチ。250SLの途中からインテリアがモダンとなり、68年には280SLへと進化します。この当時(からつい最近まで)のメルセデスでは数字が排気量を表していたので、W113の場合も、2.3リッターから2.5リッター、そして2.8リッターへと改良を重ねたということになります。

そのエレガントな佇まいからオープンカー界の貴婦人と例えられることもあるW113。台数のレアさで選べば生産期間も短くわずか5200台の生産に留まった250SLとなりますが、乗り易さでは断然に280SL(24000台)でしょうし、パゴダでクラシックスタイルを極めたいというならば230SL(20000台)の3ペダルモデルを狙うといいでしょう。


西川淳の、この個体ここに注目!

久しぶりに隅々までこだわって仕上げられたパゴダを見ることができました。その佇まいをひと目見ただけで、ただ者ではないオーラを放っています。

68年の製造と言いますから、パゴダの280SLとしてはほとんど最後に生産された個体でしょう。最初のオーナーが納車されたときの受領書から各種取扱説明書まで、全てのドキュメントが残っているというのも貴重です。これを見るだけで、歴史旅行をした気分に浸れることでしょう。

90年代初頭には日本にあった個体だそうです。現オーナーが引き継いだのちに輸出抹消され、カリフォルニアのメルセデスベンツ・クラシックセンターに送られて、そこでレストレーションが施されました。オリジナルのベージュにリペイントされ、インテリアはタンから鮮やかなレッドへと張り替えられています。

何が素晴らしいかと言うと、チリの合わされ方がすさまじい。これほどキレイにスジの通ったチリ合わせをもつパゴダなんて他に見たことがありません。否、正確にはクラシックセンター物であればここまで仕上がっていて当然ですが、それ以外ではちょっと考えられない。さらに、ドアの開閉音がもう、たまりません。もうそれを聞いただけで欲しくなってしまうほど!

とはいえ、この個体の魅力はキレイにレストアされているという話に留まりません。カリフォルニアで仕上げられたのち、日本で最終仕上げを行なったのですが、そこで現オーナーはこの68年式パゴダ280SLを一年中普段乗りに使えるよう様々な“細工”を施したのです。それもできるだけオリジナルの雰囲気を損なわないように。

たとえば、エアコン。フィッティングだけで半年を要したというだけあって、効きは申し分なし。クルマのほうもコア増しのできなかったラジエターをヒートシンクまでばらして再構築した結果、真夏の気温35度でも問題なく走る状態にまで仕上げてあります。夏のドライブだって快適、というわけです。

音楽好きのオーナーは、マッキントッシュをパゴダで鳴らしています。クラシックカーとは思えない臨場感溢れるサウンドを響かせていました。

さらに、レギュレータレバーによるパワーウィンドウや、電動アンテナ、HDIヘッドライトなど、まるでメーカーが仕上げたかのような念の入りようです。

足元を見れば、W123用のサザエホイールを履き、タイヤサイズも見映えのいい215/65-14へと換装されていますが、もちろん、オリジナルホイールも残されています。

そのほか、エンジンこそオリジナルのままですが、オートマチックトランスミッションはミッションケースから造り直してOH、メカニカル燃料ポンプもOH済みで、さらに電気の使用増に対応するべくオルタネーターの性能も三割程度アップしてあるそうです。

隅々まで手が入り、現代でも快適に乗れる工夫がいっぱいのパゴダ280SL。今、日本のマーケットで見つけることのできる最良の選択かもしれません。

車両スペック

年式1968
初年度
排気量2,778cc
走行距離56,000km
ミッション4MT
ハンドル
カラーベージュ
シャーシーNo11304412001932
エンジンNo
車検20196
出品地域静岡県
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
  • 車両の状態を専門的にチェックしているわけではありませんので、何らかの不具合や故障が含まれる場合があります。また取材から日にちが経過することによる状態変化もあり得ます。掲載情報はあくまでも参考情報であることをご理解いただき、購入に際してはご自身の車両状態チェックとご判断を優先ください。
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