1964年にフィアットの大衆2ドアRRセダン600(セイチェント)が850へ進化すると、それをベースに様々な派生モデルが誕生します。850の場合、ミニバンやバン、クーペ、そしてスパイダーが企画されました。
それぞれのスタイルを別々のデザイナーやカロッツェリアに任せるという手法は当時のイタリアメーカーでは半ば常識で、それゆえ同じ車名であっても個性の際立つ色々なデザインのモデルが現れたというわけです。たとえば有名どころを例に挙げると、社内(ベルリーナ)とベルトーネ(ベルリネッタ)、ピニンファリーナ(スパイダー)が競演したアルファロメオジュリエッタがそうでした。
850をベースとしたスパイダーは2ドアサルーン(メインモデル)のデビューに遅れること1年、65年にクーペとともに登場します。ジョルジェット・ジウジアーロが在籍中だったベルトーネがスタイリングを担当、なんと生産までを引き受けました。
そのスタイリングは63年にベルトーネが発表したシボレー・テステュードと同じ方向性のシンプルなデザインでまとめられており、後にミウラ用として利用される特徴的なヘッドライトや微妙な弧を描くフロントフェンダーライン、潔く平らにされたリアのスチール製トノカバーまわり、さらにはその下へとキレイに収まるソフトトップなど、そこかしこに若き時代のマエストロらしいこだわりのデザインがみてとれます。ちなみにヘッドライトとともにリアランプやドアノブもその後ミウラに流用されました。
車名の数字が表すとおり、850(843)ccの水冷直4エンジンはシリーズ中最高となる49psを発揮。4MTと組み合わされて、最高速は145km/hを誇っていました。
68年になるとマイナーチェンジされ、シリーズ最強となる52psの903ccエンジンが搭載されます。同時に車名も850スポーツスパイダーとなりました。残念ながらアメリカ市場対策のため特徴的だったヘッドライトデザインが改められ、もはや繊細なデザインの妙味は失われてしまいましたが、当のアメリカ市場では大いに人気を博したためにシリーズのなかでは長めの73年まで生産されています。
スパイダーの生産台数は14万台程度。ちなみにシリーズ全体としては230万台以上が世界中で販売されたと言われています。
西川淳の、この個体ここに注目! |
67年式ですからシンプルなジウジアーロデザインを保った初期型の850スパイダーです。現オーナーがヤフーオークションを通じて購入したのは11年前のこと。これまでの愛車はほとんど個人間売買で取り引きしてきたというオーナーは、売るにしても買うにしても相手の“クルマ好き度”を実際に会って確かめてから次のステップに進むというほどのカーマニアです。そんな筆者旧知の好き者の眼鏡に叶った本個体の程度の良さもまた想像に難くはありませんでした。
じっくり見ればオリジナルをよく保った良好なコンディションの個体であることが分かります。前オーナーがエンジンOHをした後に手に入れて、すぐさまアシ回りをフルメンテ、5年前にはバンパー再メッキを含むオリジナルカラーでの全塗装を施したそうです。年間二千キロ程度しか乗らなかったため、上々のコンディションをキープしていると言っていいでしょう。
インテリアはおそらくオリジナル生地で、目立つ破れや解れはありません。補修もされていますが、ほとんど分からない。唯一、助手席シートバックの裏に鍵型のキズが見受けられました。
ダッシュボード表面には割れなどありません。インストルメントパネルのコンディションも良好。助手席に大きめのヒビが入っていますが、すぐに補修すれば大丈夫。ステアリングホイールは現在ノンオリジナルですが貴重なヘレボーレが装着されていました。もちろんオリジナルのハンドルも付属します。オドメーターは現在74000キロ。実走行距離かどうかはオーナーには分からないとのことです。見たところ、そのような感じもしますが……。
貴重なフィアット純正のクロモドラ製マグホイールを履いていました。オリジナルのスチールホイール&キャップも保管されており、次のオーナーへと引き継がれます。エキパイ&マフラーはアバルト風のコピー品に換装されていました。
ソフトトップの生地もノンオリジナルで、本来はビニール製です。けれどもシックな色合いのクロス製トップという現在のコーディネートのほうがベターでしょう。幌のコンディションは上々。なんと珍しいスチール製ハードトップ(重いけど!)も付属します。
全世界で200万台以上も売れたマスプロダクションの大衆車がベースだっただけに、機関系の消耗パーツ供給に困ることはほとんどありません。エアコン&クーラーは装備されていませんが、ジウジアーロの傑作をカジュアルに楽しむことができると思えば、夏の暑さも耐えられるというものではありませんか!
小さなクルーザーのような乗り味のフィアット850スパイダー。貴重な初期型をぜひ引き継いでみてください。
年式 | 1967年 |
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初年度 | 1995年3月 |
排気量 | 843cc |
走行距離 | |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | 白 |
シャーシーNo | FIAT100GS0018017 |
エンジンNo | |
車検 | 2020年5月 |
出品地域 | 奈良県 |
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